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民事保全法

民事第9部(保全部)紹介 | 裁判所 

 

民事保全法(平成元年十2月22日法律) 最終改正:平成23年6月24日法律74号

 1章 総則(1条―8条)

 2章 保全命令に関する手続

  1節 総則(9条・10条)

  2節 保全命令

   1款 通則(11条―19条)

   2款 仮差押命令(2条―22条)

   3款 仮処分命令(23条―25条の2)

  3節 保全異議(26条―36条)

  4節 保全取消し(37条―40条)

  5節 保全抗告(41条・42条)

 3章 保全執行に関する手続

  1節 総則(43条―46条)

  2節 仮差押えの執行(47条―51条)

  3節 仮処分の執行(52条―57条)

 4章 仮処分の効力(58条―65条)

 5章 罰則(66条・67条)

 附則

   1章 総則

(趣旨)

1条  民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための仮差押え及び係争物に関する仮処分並びに民事訴訟の本案の権利関係につき仮の地位を定めるための仮処分(以下「民事保全」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

2条(民事保全の機関及び保全執行裁判所)

 民事保全の命令(以下「保全命令」という。)は、申立てにより、裁判所が行う。

 民事保全の執行(以下「保全執行」という。)は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。

 裁判所が行う保全執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもって、執行官が行う保全執行の執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもって保全執行裁判所とする。

3条(任意的口頭弁論)

  民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

4条(担保の提供)

  この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は担保を立てるべきことを命じた裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律 二百78条1項 に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。

 民事訴訟 77条 、79条及び80条の規定は、前項の担保について準用する。

5条(事件の記録の閲覧等)

  保全命令に関する手続又は保全執行に関し裁判所が行う手続について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りでない。

6条(専属管轄)

  この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

7条(民事訴訟 の準用)

  特別の定めがある場合を除き、民事保全の手続に関しては、民事訴訟 の規定を準用する。

8条(最高裁判所規則

  この法律に定めるもののほか、民事保全の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

 

   2章 保全命令に関する手続

    1節 総則

9条(釈明処分の特例)

  裁判所は、争いに係る事実関係に関し、当事者の主張を明瞭にさせる必要があるときは、口頭弁論又は審尋の期日において、当事者のため事務を処理し、又は補助する者で、裁判所が相当と認めるものに陳述をさせることができる。

10条  削除

    2節 保全命令

     1款 通則

11条(保全命令事件の管轄)

 保全命令の申立ては、日本の裁判所に本案の訴えを提起することができるとき、又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物が日本国内にあるときに限り、することができる。

12条

 保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押さえるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

 本案の訴えが民事訴訟法6条1項 に規定する特許権等に関する訴えである場合には、保全命令事件は、前項の規定にかかわらず、本案の管轄裁判所が管轄する。ただし、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が同条1項 各号に定める裁判所であるときは、その裁判所もこれを管轄する。

 本案の管轄裁判所は、第一審裁判所とする。ただし、本案が控訴審に係属するときは、控訴裁判所とする。

 仮に差し押さえるべき物又は係争物が債権(民事執行法 百4三条 に規定する債権をいう。以下この条において同じ。)であるときは、その債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶(同法百12条 に規定する船舶をいう。以下同じ。)又は動産(同法百22条 に規定する動産をいう。以下同じ。)の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。

 前項本文の規定は、仮に差し押さえるべき物又は係争物が民事執行法百67条1項 に規定する財産権(以下「その他の財産権」という。)で第三債務者又はこれに準ずる者があるものである場合(次項に規定する場合を除く。)について準用する。

 仮に差し押さえるべき物又は係争物がその他の財産権で権利の移転について登記又は登録を要するものであるときは、その財産権は、その登記又は登録の地にあるものとする。

13条(申立て及び疎明)

 保全命令の申立ては、その趣旨並びに保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性を明らかにして、これをしなければならない。

 保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない。

14条(保全命令の担保)

 保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる。

 前項の担保を立てる場合において、遅滞なく4条1項の供託所に供託することが困難な事由があるときは、裁判所の許可を得て、債権者の住所地又は事務所の所在地その他裁判所が相当と認める地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。

15条(裁判長の権限)

  保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。

16条(決定の理由)

  保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。

17条(送達)

  保全命令は、当事者に送達しなければならない。

18条(保全命令の申立ての取下げ)

  保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない。

 

19条(却下の裁判に対する即時抗告)

 保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から2週間の不変期間内に、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告を却下する裁判に対しては、更に抗告をすることができない。

 16条本文の規定は、1項の即時抗告についての決定について準用する。

     2款 仮差押命令

20条(仮差押命令の必要性)

 仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

 仮差押命令は、前項の債権が条件付又は期限付である場合においても、これを発することができる。

21条(仮差押命令の対象)

  仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる。

22条(仮差押解放金)

 仮差押命令においては、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めなければならない。

 前項の金銭の供託は、仮差押命令を発した裁判所又は保全執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所にしなければならない。

     3款 仮処分命令

23条(仮処分命令の必要性等)

 係争物に関する仮処分命令は、その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれがあるとき、又は権利を実行するのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。

 仮の地位を定める仮処分命令は、争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害又は急迫の危険を避けるためこれを必要とするときに発することができる。

 20条2項の規定は、仮処分命令について準用する。

 2項の仮処分命令は、口頭弁論又は債務者が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより仮処分命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

24条(仮処分の方法)

  裁判所は、仮処分命令の申立ての目的を達するため、債務者に対し一定の行為を命じ、若しくは禁止し、若しくは給付を命じ、又は保管人に目的物を保管させる処分その他の必要な処分をすることができる。

(仮処分解放金)

25条  裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる。

 22条2項の規定は、前項の金銭の供託について準用する。

25条の2 (債務者を特定しないで発する占有移転禁止の仮処分命令)

1 占有移転禁止の仮処分命令(係争物の引渡し又は明渡しの請求権を保全するための仮処分命令のうち、次に掲げる事項を内容とするものをいう。以下この条、54条の2及び62条において同じ。)であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる。

 債務者に対し、係争物の占有の移転を禁止し、及び係争物の占有を解いて執行官に引き渡すべきことを命ずること。

 執行官に、係争物の保管をさせ、かつ、債務者が係争物の占有の移転を禁止されている旨及び執行官が係争物を保管している旨を公示させること。

 前項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、当該執行によって係争物である不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

 1項の規定による占有移転禁止の仮処分命令は、43条2項の期間内にその執行がされなかったときは、債務者に対して送達することを要しない。この場合において、4条2項において準用する民事訴訟法79条1項 の規定による担保の取消しの決定で14条1項 の規定により立てさせた担保に係るものは、裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによって、その効力を生ずる。

    3節 保全異議

26条(保全異議の申立て)

  保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。

27条(保全執行の停止の裁判等)

 保全異議の申立てがあった場合において、保全命令の取消しの原因となることが明らかな事情及び保全執行により償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、裁判所は、申立てにより、保全異議の申立てについての決定において3項の規定による裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全執行の停止又は既にした執行処分の取消しを命ずることができる。

 抗告裁判所が保全命令を発した場合において、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、前項の規定による裁判をすることができる。

 裁判所は、保全異議の申立てについての決定において、既にした1項の規定による裁判を取り消し、変更し、又は認可しなければならない。

 1項及び前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 15条の規定は、1項の規定による裁判について準用する。

28条(事件の移送)

  裁判所は、当事者、尋問を受けるべき証人及び審尋を受けるべき参考人の住所その他の事情を考慮して、保全異議事件につき著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るために必要があるときは、申立てにより又は職権で、当該保全命令事件につき管轄権を有する他の裁判所に事件を移送することができる。

29条(保全異議の審理)

  裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。

3十条  削除

31条(審理の終結

  裁判所は、審理を終結するには、相当の猶予期間を置いて、審理を終結する日を決定しなければならない。ただし、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日においては、直ちに審理を終結する旨を宣言することができる。

32条(保全異議の申立てについての決定)

 裁判所は、保全異議の申立てについての決定においては、保全命令を認可し、変更し、又は取り消さなければならない。

 裁判所は、前項の決定において、相当と認める一定の期間内に債権者が担保を立てること又は14条1項の規定による担保の額を増加した上、相当と認める一定の期間内に債権者がその増加額につき担保を立てることを保全執行の実施又は続行の条件とする旨を定めることができる。

 裁判所は、1項の規定による保全命令を取り消す決定について、債務者が担保を立てることを条件とすることができる。

 16条本文及び17条の規定は、1項の決定について準用する。

33条(原状回復の裁判)

  仮処分命令に基づき、債権者が物の引渡し若しくは明渡し若しくは金銭の支払を受け、又は物の使用若しくは保管をしているときは、裁判所は、債務者の申立てにより、前条1項の規定により仮処分命令を取り消す決定において、債権者に対し、債務者が引き渡し、若しくは明け渡した物の返還、債務者が支払った金銭の返還又は債権者が使用若しくは保管をしている物の返還を命ずることができる。

34条(保全命令を取り消す決定の効力)

  裁判所は、32条1項の規定により保全命令を取り消す決定において、その送達を受けた日から2週間を超えない範囲内で相当と認める一定の期間を経過しなければその決定の効力が生じない旨を宣言することができる。ただし、その決定に対して保全抗告をすることができないときは、この限りでない。

35条(保全異議の申立ての取下げ)

  保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。

36条(判事補の権限の特例)

  保全異議の申立てについての裁判は、判事補が単独ですることができない。

    4節 保全取消し

37条(本案の訴えの不提起等による保全取消し)

 保全命令を発した裁判所は、債務者の申立てにより、債権者に対し、相当と認める一定の期間内に、本案の訴えを提起するとともにその提起を証する書面を提出し、既に本案の訴えを提起しているときはその係属を証する書面を提出すべきことを命じなければならない。

 前項の期間は、2週間以上でなければならない。

 債権者が1項の規定により定められた期間内に同項の書面を提出しなかったときは、裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消さなければならない。

 1項の書面が提出された後に、同項の本案の訴えが取り下げられ、又は却下された場合には、その書面を提出しなかったものとみなす。

 1項及び3項の規定の適用については、本案が家事事件手続法 257条1項 に規定する事件であるときは家庭裁判所に対する調停の申立てを、本案が労働審判 1条 に規定する事件であるときは地方裁判所に対する労働審判手続の申立てを、本案に関し仲裁合意があるときは仲裁手続の開始の手続を、本案が公害紛争処理法 2条 に規定する公害に係る被害についての損害賠償の請求に関する事件であるときは同法42条の121項 に規定する損害賠償の責任に関する裁定(次項において「責任裁定」という。)の申請を本案の訴えの提起とみなす。

 前項の調停の事件、同項の労働審判手続、同項の仲裁手続又は同項の責任裁定の手続が調停の成立、労働審判労働審判法29条2項 において準用する民事調停法 16条 の規定による調停の成立及び労働審判法24条1項 の規定による労働審判事件の終了を含む。)、仲裁判断又は責任裁定(公害紛争処理法42条の242項 の当事者間の合意の成立を含む。)によらないで終了したときは、債権者は、その終了の日から1項の規定により定められた期間と同1の期間内に本案の訴えを提起しなければならない。

 3項の規定は債権者が前項の規定による本案の訴えの提起をしなかった場合について、4項の規定は前項の本案の訴えが提起され、又は労働審判法22条1項 (同法23条2項 及び24条2項 において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があったものとみなされた後にその訴えが取り下げられ、又は却下された場合について準用する。

 16条本文及び17条の規定は、3項(前項において準用する場合を含む。)の規定による決定について準用する。

38条(事情の変更による保全取消し)

 保全すべき権利若しくは権利関係又は保全の必要性の消滅その他の事情の変更があるときは、保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、保全命令を取り消すことができる。

 前項の事情の変更は、疎明しなければならない。

 16条本文、17条並びに32条2項及び3項の規定は、1項の申立てについての決定について準用する。

39条(特別の事情による保全取消し)

 仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。

 前項の特別の事情は、疎明しなければならない。

 16条本文及び17条の規定は、1項の申立てについての決定について準用する。

40条(保全異議の規定の準用等)

1 27条から29条まで、31条及び33条から36条までの規定は、保全取消しに関する裁判について準用する。ただし、27条から29条まで、31条、33条、34条及び36条の規定は、37条1項の規定による裁判については、この限りでない。

 前項において準用する27条1項の規定による裁判は、保全取消しの申立てが保全命令を発した裁判所以外の本案の裁判所にされた場合において、事件の記録が保全命令を発した裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。

    5節 保全抗告

41条(保全抗告)

1 保全異議又は保全取消しの申立てについての裁判(33条(前条1項において準用する場合を含む。)の規定による裁判を含む。)に対しては、その送達を受けた日から2週間の不変期間内に、保全抗告をすることができる。ただし、抗告裁判所が発した保全命令に対する保全異議の申立てについての裁判に対しては、この限りでない。

 原裁判所は、保全抗告を受けた場合には、保全抗告の理由の有無につき判断しないで、事件を抗告裁判所に送付しなければならない。

 保全抗告についての裁判に対しては、更に抗告をすることができない。

 16条本文、17条並びに32条2項及び3項の規定は保全抗告についての決定について、27条1項、4項及び5項、29条、31条並びに33条の規定は保全抗告に関する裁判について、民事訴訟法3百49条 の規定は保全抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。

 前項において準用する27条1項の規定による裁判は、事件の記録が原裁判所に存するときは、その裁判所も、これをすることができる。

 

42条(保全命令を取り消す決定の効力の停止の裁判)

 保全命令を取り消す決定に対して保全抗告があった場合において、原決定の取消しの原因となることが明らかな事情及びその命令の取消しにより償うことができない損害を生ずるおそれがあることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、保全抗告についての裁判をするまでの間、担保を立てさせて、又は担保を立てることを条件として保全命令を取り消す決定の効力の停止を命ずることができる。

 15条、27条4項及び前条5項の規定は、前項の規定による裁判について準用する。

   3章 保全執行に関する手続

    1節 総則

43条(保全執行の要件)

1  保全執行は、保全命令の正本に基づいて実施する。ただし、保全命令に表示された当事者以外の者に対し、又はその者のためにする保全執行は、執行文の付された保全命令の正本に基づいて実施する。

 保全執行は、債権者に対して保全命令が送達された日から2週間を経過したときは、これをしてはならない。

 保全執行は、保全命令が債務者に送達される前であっても、これをすることができる。

 

44条(追加担保を提供しないことによる保全執行の取消し)

 1 32条2項(38条3項及び41条4項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定により担保を立てることを保全執行の続行の条件とする旨の裁判があったときは、債権者は、32条2項の規定により定められた期間内に担保を立てたことを証する書面をその期間の末日から1週間以内に保全執行裁判所又は執行官に提出しなければならない。

 債権者が前項の規定による書面の提出をしない場合において、債務者が同項の裁判の正本を提出したときは、保全執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分を取り消さなければならない。

 民事執行法40条2項 の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合について準用する。

45条(第三者異議の訴えの管轄裁判所の特例)

  高等裁判所保全執行裁判所としてした保全執行に対する第三者異議の訴えは、仮に差し押さえるべき物又は係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

46条(民事執行法 の準用)

  この章に特別の定めがある場合を除き、民事執行法5条 から14条 まで、16条、18条、23条1項、26条、27条2項、28条、3条2項、32条から34条まで、36条から38条まで、39条1項1号から4号まで、6号及び7号、40条並びに41条の規定は、保全執行について準用する。

    2節 仮差押えの(不動産に対する仮差押えの執行)

47条  民事執行法43条1項 に規定する不動産(同条2項 の規定により不動産とみなされるものを含む。)に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。

 仮差押えの登記は、裁判所書記官が嘱託する。

 強制管理の方法による仮差押えの執行においては、管理人は、次項において準用する民事執行法百7条1項 の規定により計算した配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を保全執行裁判所に届け出なければならない。

 民事執行法46条2項 、47条1項、48条2項、53条及び54条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法44条 、46条1項、47条2項、6項本文及び7項、48条、53条、54条、93条から93条の3まで、94条から百4条まで、百6条並びに百7条1項の規定は強制管理の方法による仮差押えの執行について準用する。

48条(船舶に対する仮差押えの執行)

 船舶に対する仮差押えの執行は、仮差押えの登記をする方法又は執行官に対し船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下この条において「船舶国籍証書等」という。)を取り上げて保全執行裁判所に提出すべきことを命ずる方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

 仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行は仮差押命令を発した裁判所が、船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行は船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。

 前条3項並びに民事執行法46条2項 、47条1項、48条2項、53条及び54条の規定は仮差押えの登記をする方法による仮差押えの執行について、同法45条3項 、47条1項、53条、百16条及び百18条の規定は船舶国籍証書等の取上げを命ずる方法による仮差押えの執行について準用する。

49条(動産に対する仮差押えの執行)

 動産に対する仮差押えの執行は、執行官が目的物を占有する方法により行う。

 執行官は、仮差押えの執行に係る金銭を供託しなければならない。仮差押えの執行に係る手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求を要するものについて執行官が支払を受けた金銭についても、同様とする。

 仮差押えの執行に係る動産について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、民事執行法 の規定による動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を供託しなければならない。

 民事執行法123条 から129条 まで、131条、132条及び136条の規定は、動産に対する仮差押えの執行について準用する。

50条(債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行)

 民事執行法143条 に規定する債権に対する仮差押えの執行は、保全執行裁判所が第三債務者に対し債務者への弁済を禁止する命令を発する方法により行う。

 前項の仮差押えの執行については、仮差押命令を発した裁判所が、保全執行裁判所として管轄する。

 第三債務者が仮差押えの執行がされた金銭の支払を目的とする債権の額に相当する金銭を供託した場合には、債務者が22条1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したものとみなす。ただし、その金銭の額を超える部分については、この限りでない。

 1項及び2項の規定は、その他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。

 民事執行法145条2項 から5項 まで、146条から153条まで、156条、164条5項及び6項並びに百67条の規定は、1項の債権及びその他の財産権に対する仮差押えの執行について準用する。

51条(仮差押解放金の供託による仮差押えの執行の取消し)

 1 債務者が22条1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの執行を取り消さなければならない。

 前項の規定による決定は、46条において準用する民事執行法12条2項 の規定にかかわらず、即時にその効力を生ずる。

    3節 仮処分の執行

52条(仮処分の執行)

  仮処分の執行については、この節に定めるもののほか、仮差押えの執行又は強制執行の例による。

 物の給付その他の作為又は不作為を命ずる仮処分の執行については、仮処分命令を債務名義とみなす。

53条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

  不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。

 47条2項及び3項並びに民事執行法48条2項 、53条及び54条の規定は、前2項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

54条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

  前条の規定は、不動産に関する権利以外の権利で、その処分の制限につき登記又は登録を対抗要件又は効力発生要件とするものについての登記(仮登記を除く。)又は登録(仮登録を除く。)を請求する権利を保全するための処分禁止の仮処分の執行について準用する。

 

54条の2(債務者を特定しないで発された占有移転禁止の仮処分命令の執行)

  25条の21項の規定による占有移転禁止の仮処分命令の執行は、係争物である不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。

(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)

55条  建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 47条2項及び3項並びに民事執行法48条2項 、53条及び54条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

56条(法人の代表者の職務執行停止の仮処分等の登記の嘱託)

  法人を代表する者その他法人の役員として登記された者について、その職務の執行を停止し、若しくはその職務を代行する者を選任する仮処分命令又はその仮処分命令を変更し、若しくは取り消す決定がされた場合には、裁判所書記官は、法人の本店又は主たる事務所の所在地(外国法人にあっては、各事務所の所在地)を管轄する登記所にその登記を嘱託しなければならない。ただし、これらの事項が登記すべきものでないときは、この限りでない。

57条(仮処分解放金の供託による仮処分の執行の取消し)

 債務者が25条1項の規定により定められた金銭の額に相当する金銭を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮処分の執行を取り消さなければならない。

 51条2項の規定は、前項の規定による決定について準用する。

   4章 仮処分の効力

58条(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)

 53条1項の処分禁止の登記の後にされた登記に係る権利の取得又は処分の制限は、同項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をする場合には、その登記に係る権利の取得又は消滅と抵触する限度において、その債権者に対抗することができない。

 前項の場合においては、53条1項の仮処分の債権者(同条2項の仮処分の債権者を除く。)は、同条1項の処分禁止の登記に後れる登記を抹消することができる。

 53条2項の仮処分の債権者が保全すべき登記請求権に係る登記をするには、保全仮登記に基づく本登記をする方法による。

 53条2項の仮処分の債権者は、前項の規定により登記をする場合において、その仮処分により保全すべき登記請求権に係る権利が不動産の使用又は収益をするものであるときは、不動産の使用若しくは収益をする権利(所有権を除く。)又はその権利を目的とする権利の取得に関する登記で、同条1項の処分禁止の登記に後れるものを抹消することができる。

59条(登記の抹消の通知)

 仮処分の債権者が前条2項又は4項の規定により登記を抹消するには、あらかじめ、その登記の権利者に対し、その旨を通知しなければならない。

 前項の規定による通知は、これを発する時の同項の権利者の登記簿上の住所又は事務所にあてて発することができる。この場合には、その通知は、遅くとも、これを発した日から1週間を経過した時に到達したものとみなす。

 

60条(仮処分命令の更正等)

 保全仮登記に係る権利の表示がその保全仮登記に基づく本登記をすべき旨の本案の債務名義における権利の表示と符合しないときは、53条2項の処分禁止の仮処分の命令を発した裁判所は、債権者の申立てにより、その命令を更正しなければならない。

 前項の規定による更正決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 1項の規定による更正決定が確定したときは、裁判所書記官は、保全仮登記の更正を嘱託しなければならない。

 

61条(不動産に関する権利以外の権利についての登記又は登録請求権を保全するための処分禁止の仮処分の効力)

  前3条の規定は、54条に規定する処分禁止の仮処分の効力について準用する。

 

62条(占有移転禁止の仮処分命令の効力)

 1 占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、次に掲げる者に対し、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる。

 一  当該占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたことを知って当該係争物を占有した者

 二  当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者

 占有移転禁止の仮処分命令の執行後に当該係争物を占有した者は、その執行がされたことを知って占有したものと推定する。

 

63条(執行文の付与に対する異議の申立ての理由)

  前条1項の本案の債務名義につき同項の債務者以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により当該物を占有していること、又はその仮処分の執行がされたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。

 

64条(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の効力)

  55条1項の処分禁止の登記がされたときは、債権者は、本案の債務名義に基づき、その登記がされた後に建物を譲り受けた者に対し、建物の収去及びその敷地の明渡しの強制執行をすることができる。

65条(詐害行為取消権を保全するための仮処分における解放金に対する権利の行使)

  民法424条1項 の規定による詐害行為取消権を保全するための仮処分命令において定められた25条1項 の金銭の額に相当する金銭が供託されたときは、同法424条1項 の債務者は、供託金の還付を請求する権利(以下「還付請求権」という。)を取得する。この場合において、その還付請求権は、その仮処分の執行が57条1項の規定により取り消され、かつ、保全すべき権利についての本案の判決が確定した後に、その仮処分の債権者が同法424条1項 の債務者に対する債務名義によりその還付請求権に対し強制執行をするときに限り、これを行使することができる。

   5章 罰則

66条(公示書等損壊罪)

  52条1項の規定によりその例によることとされる民事執行法168条の23項 又は4項 の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

67条(陳述等拒絶の罪)

  52条1項の規定によりその例によることとされる民事執行法168条2項 の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項 に規定する不動産等を占有する第三者は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

行政事件訴訟法 メモ

第一章 総則(この法律の趣旨)  
第1条 行政事件訴訟については、他の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。
2条(行政事件訴訟)  
  この法律において「行政事件訴訟」とは、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟及び機関訴訟をいう。
3条(抗告訴訟  
  1 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
  2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
  3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
  4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
  5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
  6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
  一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
  二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
  7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。
4条(当事者訴訟)  
  この法律において「当事者訴訟」とは、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするもの及び公法上の法律関係に関する確認の訴えその他の公法上の法律関係に関する訴訟をいう。
第5条(民衆訴訟)  
  この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
6条(機関訴訟)  
  この法律において「機関訴訟」とは、国又は公共団体の機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟をいう。
7条(この法律に定めがない事項)  
  行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。
第二章 抗告訴訟  
第一節 取消訴訟  
8条(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)  
  1 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
  2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
  一 審査請求があつた日から3箇月を経過しても裁決がないとき。
  二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
  3 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
  3 1項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から3箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。
9条(原告適格  
  1 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
  2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
10条(取消しの理由の制限)  
  1 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
  2 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
11条(被告適格等)  
  1 処分又は裁決をした行政庁(処分又は裁決があつた後に当該行政庁の権限が他の行政庁に承継されたときは、当該他の行政庁。以下同じ。)が国又は公共団体に所属する場合には、取消訴訟は、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者を被告として提起しなければならない。
  一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁の所属する国又は公共団体
  二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁の所属する国又は公共団体
  2 処分又は裁決をした行政庁が国又は公共団体に所属しない場合には、取消訴訟は、当該行政庁を被告として提起しなければならない。
  3 前2項の規定により被告とすべき国若しくは公共団体又は行政庁がない場合には、取消訴訟は、当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体を被告として提起しなければならない。
  4 第1項又は前項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟を提起する場合には、訴状には、民事訴訟の例により記載すべき事項のほか、次の各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を記載するものとする。
  一 処分の取消しの訴え 当該処分をした行政庁
  二 裁決の取消しの訴え 当該裁決をした行政庁
  5 第1項又は第3項の規定により国又は公共団体を被告として取消訴訟が提起された場合には、被告は、遅滞なく、裁判所に対し、前項各号に掲げる訴えの区分に応じてそれぞれ当該各号に定める行政庁を明らかにしなければならない。
  6 処分又は裁決をした行政庁は、当該処分又は裁決に係る第1項の規定による国又は公共団体を被告とする訴訟について、裁判上の一切の行為をする権限を有する。
12条(管轄)  
  取消訴訟は、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所又は処分若しくは裁決をした行政庁の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
  2 土地の収用、鉱業権の設定その他不動産又は特定の場所に係る処分又は裁決についての取消訴訟は、その不動産又は場所の所在地の裁判所にも、提起することができる。
  取消訴訟は、当該処分又は裁決に関し事案の処理に当たつた下級行政機関の所在地の裁判所にも、提起することができる。
  4 国又は独立行政法人通則法2条第1項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも、提起することができる。
  5 前項の規定により特定管轄裁判所に同項の取消訴訟が提起された場合であつて、他の裁判所に事実上及び法律上同一の原因に基づいてされた処分又は裁決に係る抗告訴訟が係属している場合においては、当該特定管轄裁判所は、当事者の住所又は所在地、尋問を受けるべき証人の住所、争点又は証拠の共通性その他の事情を考慮して、相当と認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部について、当該他の裁判所又は第1項から第3項までに定める裁判所に移送することができる。
13条(関連請求に係る訴訟の移送)  
  取消訴訟と次の各号の一に該当する請求(以下「関連請求」という。)に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合において、相当と認めるときは、関連請求に係る訴訟の係属する裁判所は、申立てにより又は職権で、その訴訟を取消訴訟の係属する裁判所に移送することができる。ただし、取消訴訟又は関連請求に係る訴訟の係属する裁判所が高等裁判所であるときは、この限りでない。
  一 当該処分又は裁決に関連する原状回復又は損害賠償の請求
  二 当該処分とともに一個の手続を構成する他の処分の取消しの請求
  三 当該処分に係る裁決の取消しの請求
  四 当該裁決に係る処分の取消しの請求
  五 当該処分又は裁決の取消しを求める他の請求
  六 その他当該処分又は裁決の取消しの請求と関連する請求
14条(出訴期間)  
  1 取消訴訟は、処分又は裁決があつたことを知つた日から6箇月を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
  取消訴訟は、処分又は裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
  3 処分又は裁決につき審査請求をすることができる場合又は行政庁が誤つて審査請求をすることができる旨を教示した場合において、審査請求があつたときは、処分又は裁決に係る取消訴訟は、その審査請求をした者については、前2項の規定にかかわらず、これに対する裁決があつたことを知つた日から6箇月を経過したとき又は当該裁決の日から1年を経過したときは、提起することができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
15条(被告を誤つた訴えの救済)  
  1 取消訴訟において、原告が故意又は重大な過失によらないで被告とすべき者を誤つたときは、裁判所は、原告の申立てにより、決定をもつて、被告を変更することを許すことができる。
  2 前項の決定は、書面でするものとし、その正本を新たな被告に送達しなければならない。
  4 国又は独立行政法人通則法2条第1項に規定する独立行政法人若しくは別表に掲げる法人を被告とする取消訴訟は、原告の普通裁判籍の所在地を管轄する高等裁判所の所在地を管轄する地方裁判所(次項において「特定管轄裁判所」という。)にも、提起することができる。
  4 第1項の決定があつたときは、従前の被告に対しては、訴えの取下げがあつたものとみなす。
  5 第1項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
  6 第1項の申立てを却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  7 上訴審において第1項の決定をしたときは、裁判所は、その訴訟を管轄裁判所に移送しなければならない。
16条(請求の客観的併合)  
  1 取消訴訟には、関連請求に係る訴えを併合することができる。
  2 前項の規定により訴えを併合する場合において、取消訴訟の第一審裁判所が高等裁判所であるときは、関連請求に係る訴えの被告の同意を得なければならない。被告が異議を述べないで、本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、同意したものとみなす。
17条(共同訴訟)  
  1 数人は、その数人の請求又はその数人に対する請求が処分又は裁決の取消しの請求と関連請求とである場合に限り、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。
  2 前項の場合には、前条第2項の規定を準用する。
18条(三者による請求の追加的併合)  
  三者は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、その訴訟の当事者の一方を被告として、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟高等裁判所に係属しているときは、16条2項の規定を準用する。
19条(原告による請求の追加的併合)  
  原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟高等裁判所に係属しているときは、16条2項の規定を準用する。
  2 前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法143条の規定の例によることを妨げない。
20条  
  前条第1項前段の規定により、処分の取消しの訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えに併合して提起する場合には、同項後段において準用する16条第2項の規定にかかわらず、処分の取消しの訴えの被告の同意を得ることを要せず、また、その提起があつたときは、出訴期間の遵守については、処分の取消しの訴えは、裁決の取消しの訴えを提起した時に提起されたものとみなす。
21条(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)  
  1 裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもつて、訴えの変更を許すことができる。
  2 前項の決定には、15条第2項の規定を準用する。
  3 裁判所は、第1項の規定により訴えの変更を許す決定をするには、あらかじめ、当事者及び損害賠償その他の請求に係る訴えの被告の意見をきかなければならない。
  4 訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  5 訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない。
22条(三者の訴訟参加)  
  1 裁判所は、訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは、当事者若しくはその第三者の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その第三者を訴訟に参加させることができる。
  2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び第三者の意見をきかなければならない。
  3 第1項の申立てをした第三者は、その申立てを却下する決定に対して即時抗告をすることができる。
  4 第1項の規定により訴訟に参加した第三者については、民事訴訟法第40条第1項から第3項までの規定を準用する。
  5 第1項の規定により第三者が参加の申立てをした場合には、民事訴訟法45条第3項及び第4項の規定を準用する。
23条(行政庁の訴訟参加)  
  1 裁判所は、処分又は裁決をした行政庁以外の行政庁を訴訟に参加させることが必要であると認めるときは、当事者若しくはその行政庁の申立てにより又は職権で、決定をもつて、その行政庁を訴訟に参加させることができる。
  2 裁判所は、前項の決定をするには、あらかじめ、当事者及び当該行政庁の意見をきかなければならない。
  3 第1項の規定により訴訟に参加した行政庁については、民事訴訟法第45条第1項及び第2項の規定を準用する。
23条の2(釈明処分の特則)  
  1 裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
  一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、処分又は裁決の内容、処分又は裁決の根拠となる法令の条項、処分又は裁決の原因となる事実その他処分又は裁決の理由を明らかにする資料(次項に規定する審査請求に係る事件の記録を除く。)であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
  二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する資料であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
  2 裁判所は、処分についての審査請求に対する裁決を経た後に取消訴訟の提起があつたときは、次に掲げる処分をすることができる。
  一 被告である国若しくは公共団体に所属する行政庁又は被告である行政庁に対し、当該審査請求に係る事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の提出を求めること。
  二 前号に規定する行政庁以外の行政庁に対し、同号に規定する事件の記録であつて当該行政庁が保有するものの全部又は一部の送付を嘱託すること。
24条(職権証拠調べ)  
  裁判所は、必要があると認めるときは、職権で、証拠調べをすることができる。ただし、その証拠調べの結果について、当事者の意見をきかなければならない。
25条(執行停止)  
  1 処分の取消しの訴えの提起は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
  2 処分の取消しの訴えの提起があつた場合において、処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止(以下「執行停止」という。)をすることができる。ただし、処分の効力の停止は、処分の執行又は手続の続行の停止によつて目的を達することができる場合には、することができない。
   
  3 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
  4 執行停止は、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき、又は本案について理由がないとみえるときは、することができない。
  5 第2項の決定は、疎明に基づいてする。
  6 第2項の決定は、口頭弁論を経ないですることができる。ただし、あらかじめ、当事者の意見をきかなければならない。
  7 第2項の申立てに対する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
  8 第2項の決定に対する即時抗告は、その決定の執行を停止する効力を有しない。
26条(事情変更による執行停止の取消し)  
  1 執行停止の決定が確定した後に、その理由が消滅し、その他事情が変更したときは、裁判所は、相手方の申立てにより、決定をもつて、執行停止の決定を取り消すことができる。
  2 前項の申立てに対する決定及びこれに対する不服については、前条第5項から第8項までの規定を準用する。
27条(内閣総理大臣の異議)  
  1 第25条第2項の申立てがあつた場合には、内閣総理大臣は、裁判所に対し、異議を述べることができる。執行停止の決定があつた後においても、同様とする。
  2 前項の異議には、理由を附さなければならない。
  3 前項の異議の理由においては、内閣総理大臣は、処分の効力を存続し、処分を執行し、又は手続を続行しなければ、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれのある事情を示すものとする。
  4 第1項の異議があつたときは、裁判所は、執行停止をすることができず、また、すでに執行停止の決定をしているときは、これを取り消さなければならない。
  5 第1項後段の異議は、執行停止の決定をした裁判所に対して述べなければならない。ただし、その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所に対して述べなければならない。
  内閣総理大臣は、やむをえない場合でなければ、第1項の異議を述べてはならず、また、異議を述べたときは、次の常会において国会にこれを報告しなければならない。
28条(執行停止等の管轄裁判所)  
  執行停止又はその決定の取消しの申立ての管轄裁判所は、本案の係属する裁判所とする。
29条(執行停止に関する規定の準用)  
  前4条の規定は、裁決の取消しの訴えの提起があつた場合における執行停止に関する事項について準用する。
30条(裁量処分の取消し)  
  行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつた場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
31条(特別の事情による請求の棄却)  
  取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は裁決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。
  2 裁判所は、相当と認めるときは、終局判決前に、判決をもつて、処分又は裁決が違法であることを宣言することができる。
  3 終局判決に事実及び理由を記載するには、前項の判決を引用することができる。
32条(取消判決等の効力)  
  1 処分又は裁決を取り消す判決は、第三者に対しても効力を有する。
  2 前項の規定は、執行停止の決定又はこれを取り消す決定に準用する。
33条 1 処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、処分又は裁決をした行政庁その他の関係行政庁を拘束する。
  2 申請を却下し若しくは棄却した処分又は審査請求を却下し若しくは棄却した裁決が判決により取り消されたときは、その処分又は裁決をした行政庁は、判決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分又は審査請求に対する裁決をしなければならない。
  3 前項の規定は、申請に基づいてした処分又は審査請求を認容した裁決が判決により手続に違法があることを理由として取り消された場合に準用する。
  4 第1項の規定は、執行停止の決定に準用する。
第34条(第三者の再審の訴え)  
  1 処分又は裁決を取り消す判決により権利を害された第三者で、自己の責めに帰することができない理由により訴訟に参加することができなかつたため判決に影響を及ぼすべき攻撃又は防御の方法を提出することができなかつたものは、これを理由として、確定の終局判決に対し、再審の訴えをもつて、不服の申立てをすることができる。
  2 前項の訴えは、確定判決を知つた日から30日以内に提起しなければならない。
  3 前項の期間は、不変期間とする。
  4 第1項の訴えは、判決が確定した日から1年を経過したときは、提起することができない。
35条(訴訟費用の裁判の効力)  
  国又は公共団体に所属する行政庁が当事者又は参加人である訴訟における確定した訴訟費用の裁判は、当該行政庁が所属する国又は公共団体に対し、又はそれらの者のために、効力を有する。
第二節 その他の抗告訴訟  
36条(無効等確認の訴えの原告適格  
  無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができる。
37条(不作為の違法確認の訴えの原告適格  
  不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限り、提起することができる。
37条の2(義務付けの訴えの要件等)  
  1 3条第6項第1号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避けるため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
  2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び性質をも勘案するものとする。
  3 第1項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
  4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項の規定を準用する。
  5 義務付けの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。
37条の3  3条第6項第2号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
  一 当該法令に基づく申請又は審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がされないこと。
   
  二 当該法令に基づく申請又は審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされた場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは不存在であること。
  2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は審査請求をした者に限り、提起することができる。
  3 第1項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第38条第1項において準用する第12条の規定にかかわらず、その定めに従う。
  一 第1項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不作為の違法確認の訴え
  二 第1項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取消訴訟又は無効等確認の訴え
  4 前項の規定により併合して提起された義務付けの訴え及び同項各号に定める訴えに係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
  5 義務付けの訴えが第1項から第3項までに規定する要件に該当する場合において、同項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命ずる判決をする。
  6 第4項の規定にかかわらず、裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、第3項各号に定める訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資すると認めるときは、当該訴えについてのみ終局判決をすることができる。この場合において、裁判所は、当該訴えについてのみ終局判決をしたときは、当事者の意見を聴いて、当該訴えに係る訴訟手続が完結するまでの間、義務付けの訴えに係る訴訟手続を中止することができる。
  7 第1項の義務付けの訴えのうち、行政庁が一定の裁決をすべき旨を命ずることを求めるものは、処分についての審査請求がされた場合において、当該処分に係る処分の取消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起することができないときに限り、提起することができる。
37条の4 (差止めの訴えの要件)  
  1 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
  2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
  3 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
  4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項の規定を準用する。
  5 差止めの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。
37条の5(仮の義務付け及び仮の差止め)  
  1 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下この条において「仮の義務付け」という。)ができる。
  2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条において「仮の差止め」という。)ができる。
  3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるときは、することができない。
  4 第25条第5項から第8項まで、第26条から第28条まで及び第33条第1項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
  5 前項において準用する第25条第7項の即時抗告についての裁判又は前項において準用する第26条第1項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなければならない。
38条(取消訴訟に関する規定の準用)  
  1 11条から13条まで、16条から19条まで、21条から23条まで、24条、33条及び35条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟について準用する。
  2 第10条第2項の規定は、処分の無効等確認の訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟とを提起することができる場合に、第2条の規定は、処分の無効等確認の訴えをその処分についての審査請求を棄却した裁決に係る抗告訴訟に併合して提起する場合に準用する。
  3 第1項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。この場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、38条第1項において準用する第12条の規定にかかわらず、その定めに従う。
  4 第8条及び第10条第2項の規定は、不作為の違法確認の訴えに準用する。
第三章 当事者訴訟  
39条(出訴の通知)  
  当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で、法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものが提起されたときは、裁判所は、当該処分又は裁決をした行政庁にその旨を通知するものとする。
   
40条(出訴期間の定めがある当事者訴訟)  
  1 法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟は、その法令に別段の定めがある場合を除き、正当な理由があるときは、その期間を経過した後であつても、これを提起することができる。
  2 15条の規定は、法令に出訴期間の定めがある当事者訴訟について準用する。
   
41条(抗告訴訟に関する規定の準用)  
  1 23条、24条、33条1項及び35条の規定は当事者訴訟について、23条の2の規定は当事者訴訟における処分又は裁決の理由を明らかにする資料の提出について準用する。
  2 13条の規定は、当事者訴訟とその目的たる請求と関連請求の関係にある請求に係る訴訟とが各別の裁判所に係属する場合における移送に、16条から19条までの規定は、これらの訴えの併合について準用する。
第4章 民衆訴訟及び機関訴訟  
42条(訴えの提起)  
  民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。
43条 抗告訴訟又は当事者訴訟に関する規定の準用)
  1 民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の取消しを求めるものについては、9条及び10条1項の規定を除き、取消訴訟に関する規定を準用する。
  2 民衆訴訟又は機関訴訟で、処分又は裁決の無効の確認を求めるものについては、36条の規定を除き、無効等確認の訴えに関する規定を準用する。
  3 民衆訴訟又は機関訴訟で、前2項に規定する訴訟以外のものについては、39条及び40条1項の規定を除き、当事者訴訟に関する規定を準用する。
第5章 補則  
44条(仮処分の排除)  
  行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分をすることができない。
45条 (処分の効力等を争点とする訴訟)  
  1 私法上の法律関係に関する訴訟において、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無が争われている場合には、23条1項及び2項並びに39条の規定を準用する。
  2 前項の規定により行政庁が訴訟に参加した場合には、民事訴訟法45条1項及び2項の規定を準用する。ただし、攻撃又は防御の方法は、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無に関するものに限り、提出することができる。
  3 第1項の規定により行政庁が訴訟に参加した後において、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無に関する争いがなくなつたときは、裁判所は、参加の決定を取り消すことができる。
  4 1項の場合には、当該争点について23条の2及び24条の規定を、訴訟費用の裁判について35条の規定を準用する。
46条  
取消訴訟等の提起に関する事項の教示)  
  1 行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
  一 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者
  二 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間
  3 法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨
  2 行政庁は、法律に処分についての審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を提起することができる旨の定めがある場合において、当該処分をするときは、当該処分の相手方に対し、法律にその定めがある旨を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
  3 行政庁は、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものを提起することができる処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
  一 当該訴訟の被告とすべき者
  二 当該訴訟の出訴期間
   

民事執行法

 

民事執行法(昭和五4年三月三十日法律四号)

最終改正:平成二三年6月二四日法律7四号

 

 一章 総則(一条―2一条)

 二章 強制執行

  一節 総則(2二条―4二条)

  二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行

   一款 不動産に対する強制執行

    一目 通則(4三条・4四条)

    二目 強制競売(4五条―9二条)

    三目 強制管理(9三条―百十一条)

   二款 船舶に対する強制執行(百十二条―百2一条)

   三款 動産に対する強制執行(百2二条―百4二条)

   四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行

    一目 債権執行等(百4三条―百六十7条)

    二目 少額訴訟債権執行(百六7条の二―百六七条の十四)

   五款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例(百六七条の十五・百六七条の十六)

  三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行(百六8条―百七9条)

 三章 担保権の実行としての競売等(百8十条―百9五条)

 四章 財産開示手続(百9六条―二百三条)

 五章 罰則(二百四条―二百七条)

 附則

   一章 総則

 

(趣旨)

一条  強制執行、担保権の実行としての競売及び民法 (明治29年法律89号)、商法 (明治三二年法律48号)その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産の開示(以下「民事執行」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

(執行機関)

二条  民事執行は、申立てにより、裁判所又は執行官が行う。

(執行裁判所)

三条  裁判所が行う民事執行に関してはこの法律の規定により執行処分を行うべき裁判所をもつて、執行官が行う執行処分に関してはその執行官の所属する地方裁判所をもつて執行裁判所とする。

(任意的口頭弁論)

四条  執行裁判所のする裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

(審尋)

五条  執行裁判所は、執行処分をするに際し、必要があると認めるときは、利害関係を有する者その他参考人を審尋することができる。

(執行官等の職務の執行の確保)

六条  執行官は、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる。ただし、六四条の二五項(百88条において準用する場合を含む。)の規定に基づく職務の執行については、この限りでない。

 執行官以外の者で執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行うものは、職務の執行に際し抵抗を受けるときは、執行官に対し、援助を求めることができる。

(立会人)

七条  執行官又は執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う者(以下「執行官等」という。)は、人の住居に立ち入つて職務を執行するに際し、住居主、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに出会わないときは、市町村の職員、警察官その他証人として相当と認められる者を立ち会わせなければならない。執行官が前条一項の規定により威力を用い、又は警察上の援助を受けるときも、同様とする。

(休日又は夜間の執行)

8条  執行官等は、日曜日その他の一般の休日又は午後七時から翌日の午前七時までの間に人の住居に立ち入つて職務を執行するには、執行裁判所の許可を受けなければならない。

 執行官等は、職務の執行に当たり、前項の規定により許可を受けたことを証する文書を提示しなければならない。

(身分証明書等の携帯)

9条  執行官等は、職務を執行する場合には、その身分又は資格を証する文書を携帯し、利害関係を有する者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

(執行抗告)

十条  民事執行の手続に関する裁判に対しては、特別の定めがある場合に限り、執行抗告をすることができる。

 執行抗告は、裁判の告知を受けた日から一週間の不変期間内に、抗告状を原裁判所に提出してしなければならない。

 抗告状に執行抗告の理由の記載がないときは、抗告人は、抗告状を提出した日から一週間以内に、執行抗告の理由書を原裁判所に提出しなければならない。

 執行抗告の理由は、最高裁判所規則で定めるところにより記載しなければならない。

 次の各号に該当するときは、原裁判所は、執行抗告を却下しなければならない。

 抗告人が三項の規定による執行抗告の理由書の提出をしなかつたとき。

 執行抗告の理由の記載が明らかに前項の規定に違反しているとき。

 執行抗告が不適法であつてその不備を補正することができないことが明らかであるとき。

 執行抗告が民事執行の手続を不当に遅延させることを目的としてされたものであるとき。

 抗告裁判所は、執行抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで原裁判の執行の停止若しくは民事執行の手続の全部若しくは一部の停止を命じ、又は担保を立てさせてこれらの続行を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、これらの処分を命ずることができる。

 抗告裁判所は、抗告状又は執行抗告の理由書に記載された理由に限り、調査する。ただし、原裁判に影響を及ぼすべき法令の違反又は事実の誤認の有無については、職権で調査することができる。

 五項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 六項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

10  民事訴訟 (平成8年法律百9号)三百409条 の規定は、執行抗告をすることができる裁判が確定した場合について準用する。

(執行異議)

十一条  執行裁判所の執行処分で執行抗告をすることができないものに対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。執行官の執行処分及びその遅怠に対しても、同様とする。

 前条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による申立てがあつた場合について準用する。

(取消決定等に対する執行抗告)

十二条  民事執行の手続を取り消す旨の決定に対しては、執行抗告をすることができる。民事執行の手続を取り消す執行官の処分に対する執行異議の申立てを却下する裁判又は執行官に民事執行の手続の取消しを命ずる決定に対しても、同様とする。

 前項の規定により執行抗告をすることができる裁判は、確定しなければその効力を生じない。

代理人

十三条  民事訴訟法五四条一項 の規定により訴訟代理人となることができる者以外の者は、執行裁判所でする手続については、訴え又は執行抗告に係る手続を除き、執行裁判所の許可を受けて代理人となることができる。

 執行裁判所は、いつでも前項の許可を取り消すことができる。

(費用の予納等)

四条  執行裁判所に対し民事執行の申立てをするときは、申立人は、民事執行の手続に必要な費用として裁判所書記官の定める金額を予納しなければならない。予納した費用が不足する場合において、裁判所書記官が相当の期間を定めてその不足する費用の予納を命じたときも、同様とする。

 前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 一項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。

 申立人が費用を予納しないときは、執行裁判所は、民事執行の申立てを却下し、又は民事執行の手続を取り消すことができる。

 前項の規定により申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。

(担保の提供)

五条  この法律の規定により担保を立てるには、担保を立てるべきことを命じた裁判所(以下この項において「発令裁判所」という。)又は執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に金銭又は発令裁判所が相当と認める有価証券(社債、株式等の振替に関する法律 (平成十三年法律七五号)二百七8条一項 に規定する振替債を含む。)を供託する方法その他最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。ただし、当事者が特別の契約をしたときは、その契約による。

 民事訴訟法七七条 、七9条及び8十条の規定は、前項の担保について準用する。

(送達の特例)

十六条  民事執行の手続について、執行裁判所に対し申立て、申出若しくは届出をし、又は執行裁判所から文書の送達を受けた者は、送達を受けるべき場所(日本国内に限る。)を執行裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。

 民事訴訟法百四条二項 及び三項 並びに百七条 の規定は、前項前段の場合について準用する。

 一項前段の規定による届出をしない者(前項において準用する民事訴訟法百四条三項 に規定する者を除く。)に対する送達は、事件の記録に表れたその者の住所、居所、営業所又は事務所においてする。

 前項の規定による送達をすべき場合において、20条において準用する民事訴訟法百六条 の規定により送達をすることができないときは、裁判所書記官は、同項の住所、居所、営業所又は事務所にあてて、書類を書留郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法律99号)二条六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条9項 に規定する特定信書便事業者の提供する同条二項 に規定する信書便の役務のうち書留郵便に準ずるものとして最高裁判所規則で定めるものに付して発送することができる。この場合においては、民事訴訟法百七条二項 及び三項 の規定を準用する。

(民事執行の事件の記録の閲覧等)

十七条  執行裁判所の行う民事執行について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

(官庁等に対する援助請求等)

十8条  民事執行のため必要がある場合には、執行裁判所又は執行官は、官庁又は公署に対し、援助を求めることができる。

 前項に規定する場合には、執行裁判所又は執行官は、民事執行の目的である財産(財産が土地である場合にはその上にある建物を、財産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される租税その他の公課について、所管の官庁又は公署に対し、必要な証明書の交付を請求することができる。

 前項の規定は、民事執行の申立てをしようとする者がその申立てのため同項の証明書を必要とする場合について準用する。

(専属管轄)

十9条  この法律に規定する裁判所の管轄は、専属とする。

民事訴訟 の準用)

20条  特別の定めがある場合を除き、民事執行の手続に関しては、民事訴訟 の規定を準用する。

最高裁判所規則

2一条  この法律に定めるもののほか、民事執行の手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

   二章 強制執行

 

    一節 総則

 

(債務名義)

2二条  強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

 確定判決

 仮執行の宣言を付した判決

 抗告によらなければ不服を申し立てることができない裁判(確定しなければその効力を生じない裁判にあつては、確定したものに限る。)

三の二  仮執行の宣言を付した損害賠償命令

 仮執行の宣言を付した支払督促

四の二  訴訟費用、和解の費用若しくは非訟事件(他の法令の規定により非訟事件手続法 (平成2三年法律五一号)の規定を準用することとされる事件を含む。)若しくは家事事件の手続の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分又は4二条四項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定める裁判所書記官の処分(後者の処分にあつては、確定したものに限る。)

 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

 確定した執行判決のある外国裁判所の判決

六の二  確定した執行決定のある仲裁判断

 確定判決と同一の効力を有するもの(三号に掲げる裁判を除く。)

強制執行をすることができる者の範囲)

2三条  執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。

 債務名義に表示された当事者

 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人

 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条一号、二号又は六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条三号の二に掲げる債務名義又は同条七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)

 執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。

 一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。

(外国裁判所の判決の執行判決)

2四条  外国裁判所の判決についての執行判決を求める訴えは、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が管轄し、この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

 執行判決は、裁判の当否を調査しないでしなければならない。

 一項の訴えは、外国裁判所の判決が、確定したことが証明されないとき、又は民事訴訟法百十8条 各号に掲げる要件を具備しないときは、却下しなければならない。

 執行判決においては、外国裁判所の判決による強制執行を許す旨を宣言しなければならない。

強制執行の実施)

2五条  強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施する。ただし、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促により、これに表示された当事者に対し、又はその者のためにする強制執行は、その正本に基づいて実施する。

(執行文の付与)

2六条  執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与する。

 執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる場合に、その旨を債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う。

2七条  請求が債権者の証明すべき事実の到来に係る場合においては、執行文は、債権者がその事実の到来したことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

 執行文は、債務名義について次に掲げる事由のいずれかがあり、かつ、当該債務名義に基づく不動産の引渡し又は明渡しの強制執行をする前に当該不動産を占有する者を特定することを困難とする特別の事情がある場合において、債権者がこれらを証する文書を提出したときに限り、債務者を特定しないで、付与することができる。

 債務名義が不動産の引渡し又は明渡しの請求権を表示したものであり、これを本案とする占有移転禁止の仮処分命令(民事保全法 (平成元年法律9一号)2五条の二一項 に規定する占有移転禁止の仮処分命令をいう。)が執行され、かつ、同法六二条一項 の規定により当該不動産を占有する者に対して当該債務名義に基づく引渡し又は明渡しの強制執行をすることができるものであること。

 債務名義が強制競売の手続(担保権の実行としての競売の手続を含む。以下この号において同じ。)における8三条一項本文(百88条において準用する場合を含む。)の規定による命令(以下「引渡命令」という。)であり、当該強制競売の手続において当該引渡命令の引渡義務者に対し次のイからハまでのいずれかの保全処分及び公示保全処分(5五条一項に規定する公示保全処分をいう。以下この項において同じ。)が執行され、かつ、8三条の二一項(百8七条五項又は百88条において準用する場合を含む。)の規定により当該不動産を占有する者に対して当該引渡命令に基づく引渡しの強制執行をすることができるものであること。

イ 五五条一項三号(百88条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分

ロ 七七条一項三号(百88条において準用する場合を含む。)に掲げる保全処分及び公示保全処分

ハ 百8七条一項に規定する保全処分又は公示保全処分(五五条一項三号に掲げるものに限る。)

 前項の執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行は、当該執行文の付与の日から四週間を経過する前であつて、当該強制執行において不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができる場合に限り、することができる。

 三項の規定により付与された執行文については、前項の規定により当該執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行がされたときは、当該強制執行によつて当該不動産の占有を解かれた者が、債務者となる。

(執行文の再度付与等)

28条  執行文は、債権の完全な弁済を得るため執行文の付された債務名義の正本が数通必要であるとき、又はこれが滅失したときに限り、更に付与することができる。

 前項の規定は、少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本を更に交付する場合について準用する。

(債務名義等の送達)

29条  強制執行は、債務名義又は確定により債務名義となるべき裁判の正本又は謄本が、あらかじめ、又は同時に、債務者に送達されたときに限り、開始することができる。2七条の規定により執行文が付与された場合においては、執行文及び同条の規定により債権者が提出した文書の謄本も、あらかじめ、又は同時に、送達されなければならない。

(期限の到来又は担保の提供に係る場合の強制執行

三十条  請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行は、その期限の到来後に限り、開始することができる。

 担保を立てることを強制執行の実施の条件とする債務名義による強制執行は、債権者が担保を立てたことを証する文書を提出したときに限り、開始することができる。

(反対給付又は他の給付の不履行に係る場合の強制執行

3一条  債務者の給付が反対給付と引換えにすべきものである場合においては、強制執行は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証明したときに限り、開始することができる。

 債務者の給付が、他の給付について強制執行の目的を達することができない場合に、他の給付に代えてすべきものであるときは、強制執行は、債権者が他の給付について強制執行の目的を達することができなかつたことを証明したときに限り、開始することができる。

(執行文の付与等に関する異議の申立て)

3二条  執行文の付与の申立てに関する処分に対しては、裁判所書記官の処分にあつてはその裁判所書記官の所属する裁判所に、公証人の処分にあつてはその公証人の役場の所在地を管轄する地方裁判所に異議を申し立てることができる。

 執行文の付与に対し、異議の申立てがあつたときは、裁判所は、異議についての裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又は担保を立てさせてその続行を命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。

 一項の規定による申立てについての裁判及び前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 前項に規定する裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

 前各項の規定は、28条二項の規定による少額訴訟における確定判決又は仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決若しくは支払督促の正本の交付について準用する。

(執行文付与の訴え)

3三条  2七条一項又は二項に規定する文書の提出をすることができないときは、債権者は、執行文(同条三項の規定により付与されるものを除く。)の付与を求めるために、執行文付与の訴えを提起することができる。

 前項の訴えは、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所が管轄する。

 2二条一号から三号まで、六号又は六号の二に掲げる債務名義並びに同条七号に掲げる債務名義のうち次号及び六号に掲げるもの以外のもの

     第一審裁判所

一の二  2二条三号の二に掲げる債務名義並びに同条七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令並びに損害賠償命令事件に関する手続における和解及び請求の認諾に係るもの 損害賠償命令事件が係属していた地方裁判所

 2二条四号に掲げる債務名義のうち次号に掲げるもの以外のもの

     仮執行の宣言を付した支払督促を発した裁判所書記官の所属する簡易裁判所(仮執行の宣言を付した支払督促に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所

 2二条四号に掲げる債務名義のうち民事訴訟法百3二条の十一項 本文の規定による支払督促の申立て又は同法四百二条一項 に規定する方式により記載された書面をもつてされた支払督促の申立てによるもの

     当該支払督促の申立てについて同法三百98条 (同法四百二条二項 において準用する場合を含む。)の規定により訴えの提起があつたものとみなされる裁判所

 2二条四号の二に掲げる債務名義

     同号の処分をした裁判所書記官の所属する裁判所

 2二条五号に掲げる債務名義

     債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所(この普通裁判籍がないときは、請求の目的又は差し押さえることができる債務者の財産の所在地を管轄する裁判所)

 2二条七号に掲げる債務名義のうち和解若しくは調停(上級裁判所において成立した和解及び調停を除く。)又は労働審判に係るもの(一号の二に掲げるものを除く。)

     和解若しくは調停が成立した簡易裁判所地方裁判所若しくは家庭裁判所簡易裁判所において成立した和解又は調停に係る請求が簡易裁判所の管轄に属しないものであるときは、その簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所)又は労働審判が行われた際に労働審判事件が係属していた地方裁判所

(執行文付与に対する異議の訴え)

3四条  2七条の規定により執行文が付与された場合において、債権者の証明すべき事実の到来したこと又は債務名義に表示された当事者以外の者に対し、若しくはその者のために強制執行をすることができることについて異議のある債務者は、その執行文の付された債務名義の正本に基づく強制執行の不許を求めるために、執行文付与に対する異議の訴えを提起することができる。

 異議の事由が数個あるときは、債務者は、同時に、これを主張しなければならない。

 前条二項の規定は、一項の訴えについて準用する。

(請求異議の訴え)

3五条  債務名義(2二条二号、三号の二又は四号に掲げる債務名義で確定前のものを除く。以下この項において同じ。)に係る請求権の存在又は内容について異議のある債務者は、その債務名義による強制執行の不許を求めるために、請求異議の訴えを提起することができる。裁判以外の債務名義の成立について異議のある債務者も、同様とする。

 確定判決についての異議の事由は、口頭弁論の終結後に生じたものに限る。

 3三条二項及び前条二項の規定は、一項の訴えについて準用する。

(執行文付与に対する異議の訴え等に係る執行停止の裁判)

3六条  執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起があつた場合において、異議のため主張した事情が法律上理由があるとみえ、かつ、事実上の点について疎明があつたときは、受訴裁判所は、申立てにより、終局判決において次条一項の裁判をするまでの間、担保を立てさせ、若しくは立てさせないで強制執行の停止を命じ、又はこれとともに、担保を立てさせて強制執行の続行を命じ、若しくは担保を立てさせて既にした執行処分の取消しを命ずることができる。急迫の事情があるときは、裁判長も、これらの処分を命ずることができる。

 前項の申立てについての裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 一項に規定する事由がある場合において、急迫の事情があるときは、執行裁判所は、申立てにより、同項の規定による裁判の正本を提出すべき期間を定めて、同項に規定する処分を命ずることができる。この裁判は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えの提起前においても、することができる。

 前項の規定により定められた期間を経過したとき、又はその期間内に一項の規定による裁判が執行裁判所若しくは執行官に提出されたときは、前項の裁判は、その効力を失う。

 一項又は三項の申立てについての裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(終局判決における執行停止の裁判等)

3七条  受訴裁判所は、執行文付与に対する異議の訴え又は請求異議の訴えについての終局判決において、前条一項に規定する処分を命じ、又は既にした同項の規定による裁判を取り消し、変更し、若しくは認可することができる。この裁判については、仮執行の宣言をしなければならない。

 前項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

(第三者異議の訴え)

38条  強制執行の目的物について所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利を有する第三者は、債権者に対し、その強制執行の不許を求めるために、第三者異議の訴えを提起することができる。

 前項に規定する第三者は、同項の訴えに併合して、債務者に対する強制執行の目的物についての訴えを提起することができる。

 一項の訴えは、執行裁判所が管轄する。

 前二条の規定は、一項の訴えに係る執行停止の裁判について準用する。

強制執行の停止)

39条  強制執行は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。

 債務名義(執行証書を除く。)若しくは仮執行の宣言を取り消す旨又は強制執行を許さない旨を記載した執行力のある裁判の正本

 債務名義に係る和解、認諾、調停又は労働審判の効力がないことを宣言する確定判決の正本

 2二条二号から四号の二までに掲げる債務名義が訴えの取下げその他の事由により効力を失つたことを証する調書の正本その他の裁判所書記官の作成した文書

 強制執行をしない旨又はその申立てを取り下げる旨を記載した裁判上の和解若しくは調停の調書の正本又は労働審判 2一条四項 の規定により裁判上の和解と同一の効力を有する労働審判の審判書若しくは同法2条七項 の調書の正本

 強制執行を免れるための担保を立てたことを証する文書

 強制執行の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の正本

 強制執行の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の正本

 債権者が、債務名義の成立後に、弁済を受け、又は弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書

 前項8号に掲げる文書のうち弁済を受けた旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、四週間に限るものとする。

 一項8号に掲げる文書のうち弁済の猶予を承諾した旨を記載した文書の提出による強制執行の停止は、二回に限り、かつ、通じて六月を超えることができない。

(執行処分の取消し)

40条  前条一項一号から六号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所又は執行官は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。

 十二条の規定は、前項の規定により執行処分を取り消す場合については適用しない。

(債務者が死亡した場合の強制執行の続行)

4一条  強制執行は、その開始後に債務者が死亡した場合においても、続行することができる。

 前項の場合において、債務者の相続人の存在又はその所在が明らかでないときは、執行裁判所は、申立てにより、相続財産又は相続人のために、特別代理人を選任することができる。

 民事訴訟法3五条二項 及び三項 の規定は、前項の特別代理人について準用する。

(執行費用の負担)

4二条  強制執行の費用で必要なもの(以下「執行費用」という。)は、債務者の負担とする。

 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行にあつては、執行費用は、その執行手続において、債務名義を要しないで、同時に、取り立てることができる。

 強制執行の基本となる債務名義(執行証書を除く。)を取り消す旨の裁判又は債務名義に係る和解、認諾、調停若しくは労働審判の効力がないことを宣言する判決が確定したときは、債権者は、支払を受けた執行費用に相当する金銭を債務者に返還しなければならない。

 一項の規定により債務者が負担すべき執行費用で二項の規定により取り立てられたもの以外のもの及び前項の規定により債権者が返還すべき金銭の額は、申立てにより、執行裁判所の裁判所書記官が定める。

 前項の申立てについての裁判所書記官の処分に対しては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内に、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 執行裁判所は、四項の規定による裁判所書記官の処分に対する異議の申立てを理由があると認める場合において、同項に規定する執行費用及び返還すべき金銭の額を定めるべきときは、自らその額を定めなければならない。

 五項の規定による異議の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 四項の規定による裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。

 民事訴訟法七四条一項 の規定は、四項の規定による裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、五項、七項及び前項並びに同条三項 の規定を準用する。

 

    二節 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行

     一款 不動産に対する強制執行

      一目 通則

(不動産執行の方法)

四三条  不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この節において同じ。)に対する強制執行(以下「不動産執行」という。)は、強制競売又は強制管理の方法により行う。これらの方法は、併用することができる。

 金銭の支払を目的とする債権についての強制執行については、不動産の共有持分、登記された地上権及び永小作権並びにこれらの権利の共有持分は、不動産とみなす。

(執行裁判所)

四四条  不動産執行については、その所在地(前条二項の規定により不動産とみなされるものにあつては、その登記をすべき地)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

 建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがつて存在する場合には、その建物に対する強制執行については建物の存する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、その土地に対する強制執行については土地の所在地を管轄する地方裁判所又は建物に対する強制執行の申立てを受けた地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

 前項の場合において、執行裁判所は、必要があると認めるときは、事件を他の管轄裁判所に移送することができる。

 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 

      二目 強制競売

(開始決定等)

四五条  執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言しなければならない。

 前項の開始決定は、債務者に送達しなければならない。

 強制競売の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(差押えの効力)

四六条  差押えの効力は、強制競売の開始決定が債務者に送達された時に生ずる。ただし、差押えの登記がその開始決定の送達前にされたときは、登記がされた時に生ずる。

 差押えは、債務者が通常の用法に従つて不動産を使用し、又は収益することを妨げない。

(二重開始決定)

四七条  強制競売又は担保権の実行としての競売(以下この節において「競売」という。)の開始決定がされた不動産について強制競売の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制競売の開始決定をするものとする。

 先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の申立てが取り下げられたとき、又は先の開始決定に係る強制競売若しくは競売の手続が取り消されたときは、執行裁判所は、後の強制競売の開始決定に基づいて手続を続行しなければならない。

 前項の場合において、後の強制競売の開始決定が配当要求の終期後の申立てに係るものであるときは、裁判所書記官は、新たに配当要求の終期を定めなければならない。この場合において、既に五十条一項(百88条において準用する場合を含む。)の届出をした者に対しては、四9条二項の規定による催告は、要しない。

 前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

 先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が停止されたときは、執行裁判所は、申立てにより、後の強制競売の開始決定(配当要求の終期までにされた申立てに係るものに限る。)に基づいて手続を続行する旨の裁判をすることができる。ただし、先の開始決定に係る強制競売又は競売の手続が取り消されたとすれば、六二条一項二号に掲げる事項について変更が生ずるときは、この限りでない。

 前項の申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。

(差押えの登記の嘱託等)

四8条  強制競売の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、直ちに、その開始決定に係る差押えの登記を嘱託しなければならない。

 登記官は、前項の規定による嘱託に基づいて差押えの登記をしたときは、その登記事項証明書を執行裁判所に送付しなければならない。

(開始決定及び配当要求の終期の公告等)

四9条  強制競売の開始決定に係る差押えの効力が生じた場合(その開始決定前に強制競売又は競売の開始決定がある場合を除く。)においては、裁判所書記官は、物件明細書の作成までの手続に要する期間を考慮して、配当要求の終期を定めなければならない。

 裁判所書記官は、配当要求の終期を定めたときは、開始決定がされた旨及び配当要求の終期を公告し、かつ、次に掲げるものに対し、債権(利息その他の附帯の債権を含む。)の存否並びにその原因及び額を配当要求の終期までに執行裁判所に届け出るべき旨を催告しなければならない。

 8七条一項三号に掲げる債権者

 8七条一項四号に掲げる債権者(抵当証券の所持人にあつては、知れている所持人に限る。)

 租税その他の公課を所管する官庁又は公署

 裁判所書記官は、特に必要があると認めるときは、配当要求の終期を延期することができる。

 裁判所書記官は、前項の規定により配当要求の終期を延期したときは、延期後の終期を公告しなければならない。

 一項又は三項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

(催告を受けた者の債権の届出義務)

五十条  前条二項の規定による催告を受けた同項一号又は二号に掲げる者は、配当要求の終期までに、その催告に係る事項について届出をしなければならない。

 前項の届出をした者は、その届出に係る債権の元本の額に変更があつたときは、その旨の届出をしなければならない。

 前二項の規定により届出をすべき者は、故意又は過失により、その届出をしなかつたとき、又は不実の届出をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。

(配当要求)

五一条  二五条の規定により強制執行を実施することができる債務名義の正本(以下「執行力のある債務名義の正本」という。)を有する債権者、強制競売の開始決定に係る差押えの登記後に登記された仮差押債権者及び百8一条一項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。

 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(配当要求の終期の変更)

五十二条  配当要求の終期から、三月以内に売却許可決定がされないとき、又は三月以内にされた売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたときは、配当要求の終期は、その終期から三月を経過した日に変更されたものとみなす。ただし、配当要求の終期から三月以内にされた売却許可決定が効力を失つた場合において、六七条の規定による次順位買受けの申出について売却許可決定がされたとき(その決定が取り消され、又は効力を失つたときを除く。)は、この限りでない。

(不動産の滅失等による強制競売の手続の取消し)

五三条  不動産の滅失その他売却による不動産の移転を妨げる事情が明らかとなつたときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。

(差押えの登記の抹消の嘱託)

五四条  強制競売の申立てが取り下げられたとき、又は強制競売の手続を取り消す決定が効力を生じたときは、裁判所書記官は、その開始決定に係る差押えの登記の抹消を嘱託しなければならない。

 前項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、その取下げ又は取消決定に係る差押債権者の負担とする。

(売却のための保全処分等)

五五条  執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が価格減少行為(不動産の価格を減少させ、又は減少させるおそれがある行為をいう。以下この項において同じ。)をするときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、次に掲げる保全処分又は公示保全処分(執行官に、当該保全処分の内容を、不動産の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により公示させることを内容とする保全処分をいう。以下同じ。)を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による不動産の価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。

 当該価格減少行為をする者に対し、当該価格減少行為を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

イ 当該価格減少行為をする者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。

ロ 執行官に不動産の保管をさせること。

 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分

イ 前号イ及びロに掲げる事項

ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び当該不動産の使用を許すこと。

 前項二号又は三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。

 前項の債務者が不動産を占有する場合

 前項の不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者又は五9条一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができない場合

 執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し一項の規定による決定をする場合において、必要があると認めるときは、その者を審尋しなければならない。

 執行裁判所が一項の規定による決定をするときは、申立人に担保を立てさせることができる。ただし、同項二号に掲げる保全処分については、申立人に担保を立てさせなければ、同項の規定による決定をしてはならない。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、一項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。

 一項又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 五項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。

 一項二号又は三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定は、申立人に告知された日から二週間を経過したときは、執行してはならない。

 前項に規定する決定は、相手方に送達される前であつても、執行することができる。

10  一項の申立て又は同項(一号を除く。)の規定による決定の執行に要した費用(不動産の保管のために要した費用を含む。)は、その不動産に対する強制競売の手続においては、共益費用とする。

(相手方を特定しないで発する売却のための保全処分等)

五五条の二  前条一項二号又は三号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずる決定については、当該決定の執行前に相手方を特定することを困難とする特別の事情があるときは、執行裁判所は、相手方を特定しないで、これを発することができる。

 前項の規定による決定の執行は、不動産の占有を解く際にその占有者を特定することができない場合は、することができない。

 一項の規定による決定の執行がされたときは、当該執行によつて不動産の占有を解かれた者が、当該決定の相手方となる。

 一項の規定による決定は、前条8項の期間内にその執行がされなかつたときは、相手方に対して送達することを要しない。この場合において、十五条二項において準用する民事訴訟法七9条一項 の規定による担保の取消しの決定で前条四項の規定により立てさせた担保に係るものは、執行裁判所が相当と認める方法で申立人に告知することによつて、その効力を生ずる。

(地代等の代払の許可)

五六条  建物に対し強制競売の開始決定がされた場合において、その建物の所有を目的とする地上権又は賃借権について債務者が地代又は借賃を支払わないときは、執行裁判所は、申立てにより、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)がその不払の地代又は借賃を債務者に代わつて弁済することを許可することができる。

 五五条十項の規定は、前項の申立てに要した費用及び同項の許可を得て支払つた地代又は借賃について準用する。

(現況調査)

五七条  執行裁判所は、執行官に対し、不動産の形状、占有関係その他の現況について調査を命じなければならない。

 執行官は、前項の調査をするに際し、不動産に立ち入り、又は債務者若しくはその不動産を占有する第三者に対し、質問をし、若しくは文書の提示を求めることができる。

 執行官は、前項の規定により不動産に立ち入る場合において、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。

 執行官は、一項の調査のため必要がある場合には、市町村(特別区の存する区域にあつては、都)に対し、不動産(不動産が土地である場合にはその上にある建物を、不動産が建物である場合にはその敷地を含む。)に対して課される固定資産税に関して保有する図面その他の資料の写しの交付を請求することができる。

 執行官は、前項に規定する場合には、電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を行う公益事業を営む法人に対し、必要な事項の報告を求めることができる。

(評価)

五8条  執行裁判所は、評価人を選任し、不動産の評価を命じなければならない。

 評価人は、近傍同種の不動産の取引価格、不動産から生ずべき収益、不動産の原価その他の不動産の価格形成上の事情を適切に勘案して、遅滞なく、評価をしなければならない。この場合において、評価人は、強制競売の手続において不動産の売却を実施するための評価であることを考慮しなければならない。

 評価人は、六条二項の規定により執行官に対し援助を求めるには、執行裁判所の許可を受けなければならない。

 十8条二項並びに前条二項、四項及び五項の規定は、評価人が評価をする場合について準用する。

(売却に伴う権利の消滅等)

五9条  不動産の上に存する先取特権、使用及び収益をしない旨の定めのある質権並びに抵当権は、売却により消滅する。

 前項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない不動産に係る権利の取得は、売却によりその効力を失う。

 不動産に係る差押え、仮差押えの執行及び一項の規定により消滅する権利を有する者、差押債権者又は仮差押債権者に対抗することができない仮処分の執行は、売却によりその効力を失う。

 不動産の上に存する留置権並びに使用及び収益をしない旨の定めのない質権で二項の規定の適用がないものについては、買受人は、これらによつて担保される債権を弁済する責めに任ずる。

 利害関係を有する者が次条一項に規定する売却基準価額が定められる時までに一項、二項又は前項の規定と異なる合意をした旨の届出をしたときは、売却による不動産の上の権利の変動は、その合意に従う。

(売却基準価額の決定等)

六十条  執行裁判所は、評価人の評価に基づいて、不動産の売却の額の基準となるべき価額(以下「売却基準価額」という。)を定めなければならない。

 執行裁判所は、必要があると認めるときは、売却基準価額を変更することができる。

 買受けの申出の額は、売却基準価額からその十分の二に相当する額を控除した価額(以下「買受可能価額」という。)以上でなければならない。

(一括売却)

六一条  執行裁判所は、相互の利用上不動産を他の不動産(差押債権者又は債務者を異にするものを含む。)と一括して同一の買受人に買い受けさせることが相当であると認めるときは、これらの不動産を一括して売却することを定めることができる。ただし、一個の申立てにより強制競売の開始決定がされた数個の不動産のうち、あるものの買受可能価額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある場合には、債務者の同意があるときに限る。

(物件明細書)

六二条  裁判所書記官は、次に掲げる事項を記載した物件明細書を作成しなければならない。

 不動産の表示

 不動産に係る権利の取得及び仮処分の執行で売却によりその効力を失わないもの

 売却により設定されたものとみなされる地上権の概要

 裁判所書記官は、前項の物件明細書の写しを執行裁判所に備え置いて一般の閲覧に供し、又は不特定多数の者が当該物件明細書の内容の提供を受けることができるものとして最高裁判所規則で定める措置を講じなければならない。

 前二項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

(剰余を生ずる見込みのない場合等の措置)

六三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、四七条六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。

 差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。

 優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。

 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。

 差押債権者が不動産の買受人になることができる場合

     申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供

 差押債権者が不動産の買受人になることができない場合

     買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供

 前項二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。

 二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。

(売却の方法及び公告)

六四条  不動産の売却は、裁判所書記官の定める売却の方法により行う。

 不動産の売却の方法は、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める。

 裁判所書記官は、入札又は競り売りの方法により売却をするときは、売却の日時及び場所を定め、執行官に売却を実施させなければならない。

 前項の場合においては、20条において準用する民事訴訟法9三条一項 の規定にかかわらず、売却決定期日は、裁判所書記官が、売却を実施させる旨の処分と同時に指定する。

 三項の場合においては、裁判所書記官は、売却すべき不動産の表示、売却基準価額並びに売却の日時及び場所を公告しなければならない。

 一項、三項又は四項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

(内覧)

六四条の二  執行裁判所は、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)の申立てがあるときは、執行官に対し、内覧(不動産の買受けを希望する者をこれに立ち入らせて見学させることをいう。以下この条において同じ。)の実施を命じなければならない。ただし、当該不動産の占有者の占有の権原が差押債権者、仮差押債権者及び五9条一項の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができる場合で当該占有者が同意しないときは、この限りでない。

 前項の申立ては、最高裁判所規則で定めるところにより、売却を実施させる旨の裁判所書記官の処分の時までにしなければならない。

 一項の命令を受けた執行官は、売却の実施の時までに、最高裁判所規則で定めるところにより内覧への参加の申出をした者(不動産を買い受ける資格又は能力を有しない者その他最高裁判所規則で定める事由がある者を除く。五項及び六項において「内覧参加者」という。)のために、内覧を実施しなければならない。

 執行裁判所は、内覧の円滑な実施が困難であることが明らかであるときは、一項の命令を取り消すことができる。

 執行官は、内覧の実施に際し、自ら不動産に立ち入り、かつ、内覧参加者を不動産に立ち入らせることができる。

 執行官は、内覧参加者であつて内覧の円滑な実施を妨げる行為をするものに対し、不動産に立ち入ることを制限し、又は不動産から退去させることができる。

(売却の場所の秩序維持)

六五条  執行官は、次に掲げる者に対し、売却の場所に入ることを制限し、若しくはその場所から退場させ、又は買受けの申出をさせないことができる。

 他の者の買受けの申出を妨げ、若しくは不当に価額を引き下げる目的をもつて連合する等売却の適正な実施を妨げる行為をし、又はその行為をさせた者

 他の民事執行の手続の売却不許可決定において前号に該当する者と認定され、その売却不許可決定の確定の日から二年を経過しない者

 民事執行の手続における売却に関し刑法9五条 から9六条の五 まで、百9七条から百9七条の四まで若しくは百98条、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 三条一項一号 から四号 まで若しくは二項 (同条一項一号 から四号 までに係る部分に限る。)又は公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律一条一項 、二条一項若しくは四条の規定により刑に処せられ、その裁判の確定の日から二年を経過しない者

(買受けの申出の保証)

六六条  不動産の買受けの申出をしようとする者は、最高裁判所規則で定めるところにより、執行裁判所が定める額及び方法による保証を提供しなければならない。

(次順位買受けの申出)

六七条  最高価買受申出人に次いで高額の買受けの申出をした者は、その買受けの申出の額が、買受可能価額以上で、かつ、最高価買受申出人の申出の額から買受けの申出の保証の額を控除した額以上である場合に限り、売却の実施の終了までに、執行官に対し、最高価買受申出人に係る売却許可決定が8十条一項の規定により効力を失うときは、自己の買受けの申出について売却を許可すべき旨の申出(以下「次順位買受けの申出」という。)をすることができる。

(債務者の買受けの申出の禁止)

六8条  債務者は、買受けの申出をすることができない。

(買受けの申出をした差押債権者のための保全処分等)

六8条の二  執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法により売却を実施させても買受けの申出がなかつた場合において、債務者又は不動産の占有者が不動産の売却を困難にする行為をし、又はその行為をするおそれがあるときは、差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。次項において同じ。)の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、担保を立てさせて、次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)を命ずることができる。

 債務者又は不動産の占有者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官又は申立人に引き渡すことを命ずること。

 執行官又は申立人に不動産の保管をさせること。

 差押債権者は、前項の申立てをするには、買受可能価額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の入札又は競り売りの方法による売却の実施において申出額に達する買受けの申出がないときは自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出をし、かつ、申出額に相当する保証の提供をしなければならない。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより又は職権で、一項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。

 五五条二項の規定は一項に規定する保全処分について、同条三項の規定は一項の規定による決定について、同条六項の規定は一項の申立てについての裁判、前項の規定による裁判又は同項の申立てを却下する裁判について、同条七項の規定は前項の規定による決定について、同条8項及び9項並びに五五条の二の規定は一項に規定する保全処分を命ずる決定について、五五条十項の規定は一項の申立て又は同項の規定による決定の執行に要した費用について、六三条四項の規定は二項の保証の提供について準用する。

(売却の見込みのない場合の措置)

六8条の三  執行裁判所は、裁判所書記官が入札又は競り売りの方法による売却を三回実施させても買受けの申出がなかつた場合において、不動産の形状、用途、法令による利用の規制その他の事情を考慮して、更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは、強制競売の手続を停止することができる。この場合においては、差押債権者に対し、その旨を通知しなければならない。

 差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から三月以内に、執行裁判所に対し、買受けの申出をしようとする者があることを理由として、売却を実施させるべき旨を申し出たときは、裁判所書記官は、六四条の定めるところにより売却を実施させなければならない。

 差押債権者が前項の期間内に同項の規定による売却実施の申出をしないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消すことができる。同項の規定により裁判所書記官が売却を実施させた場合において買受けの申出がなかつたときも、同様とする。

(売却決定期日)

六9条  執行裁判所は、売却決定期日を開き、売却の許可又は不許可を言い渡さなければならない。

(売却の許可又は不許可に関する意見の陳述)

七十条  不動産の売却の許可又は不許可に関し利害関係を有する者は、次条各号に掲げる事由で自己の権利に影響のあるものについて、売却決定期日において意見を陳述することができる。

(売却不許可事由)

七一条  執行裁判所は、次に掲げる事由があると認めるときは、売却不許可決定をしなければならない。

 強制競売の手続の開始又は続行をすべきでないこと。

 最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格若しくは能力を有しないこと又はその代理人がその権限を有しないこと。

 最高価買受申出人が不動産を買い受ける資格を有しない者の計算において買受けの申出をした者であること。

 最高価買受申出人、その代理人又は自己の計算において最高価買受申出人に買受けの申出をさせた者が次のいずれかに該当すること。

イ その強制競売の手続において六五条一号に規定する行為をした者

ロ その強制競売の手続において、代金の納付をしなかつた者又は自己の計算においてその者に買受けの申出をさせたことがある者

ハ 六五条二号又は三号に掲げる者

 七五条一項の規定による売却の不許可の申出があること。

 売却基準価額若しくは一括売却の決定、物件明細書の作成又はこれらの手続に重大な誤りがあること。

 売却の手続に重大な誤りがあること。

(売却の実施の終了後に執行停止の裁判等の提出があつた場合の措置)

七二条  売却の実施の終了から売却決定期日の終了までの間に39条一項七号に掲げる文書の提出があつた場合には、執行裁判所は、他の事由により売却不許可決定をするときを除き、売却決定期日を開くことができない。この場合においては、最高価買受申出人又は次順位買受申出人は、執行裁判所に対し、買受けの申出を取り消すことができる。

 売却決定期日の終了後に前項に規定する文書の提出があつた場合には、その期日にされた売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたとき、又はその期日にされた売却不許可決定が確定したときに限り、39条の規定を適用する。

 売却の実施の終了後に39条一項8号に掲げる文書の提出があつた場合には、その売却に係る売却許可決定が取り消され、若しくは効力を失つたとき、又はその売却に係る売却不許可決定が確定したときに限り、同条の規定を適用する。

(超過売却となる場合の措置)

七三条  数個の不動産を売却した場合において、あるものの買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがあるときは、執行裁判所は、他の不動産についての売却許可決定を留保しなければならない。

 

 前項の場合において、その買受けの申出の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる見込みがある不動産が数個あるときは、執行裁判所は、売却の許可をすべき不動産について、あらかじめ、債務者の意見を聴かなければならない。

 一項の規定により売却許可決定が留保された不動産の最高価買受申出人又は次順位買受申出人は、執行裁判所に対し、買受けの申出を取り消すことができる。

 売却許可決定のあつた不動産について代金が納付されたときは、執行裁判所は、前項の不動産に係る強制競売の手続を取り消さなければならない。

(売却の許可又は不許可の決定に対する執行抗告)

七四条  売却の許可又は不許可の決定に対しては、その決定により自己の権利が害されることを主張するときに限り、執行抗告をすることができる。

 売却許可決定に対する執行抗告は、七一条各号に掲げる事由があること又は売却許可決定の手続に重大な誤りがあることを理由としなければならない。

 民事訴訟法三百38条一項 各号に掲げる事由は、前二項の規定にかかわらず、売却の許可又は不許可の決定に対する執行抗告の理由とすることができる。

 抗告裁判所は、必要があると認めるときは、抗告人の相手方を定めることができる。

 売却の許可又は不許可の決定は、確定しなければその効力を生じない。

(不動産が損傷した場合の売却の不許可の申出等)

七五条  最高価買受申出人又は買受人は、買受けの申出をした後天災その他自己の責めに帰することができない事由により不動産が損傷した場合には、執行裁判所に対し、売却許可決定前にあつては売却の不許可の申出をし、売却許可決定後にあつては代金を納付する時までにその決定の取消しの申立てをすることができる。ただし、不動産の損傷が軽微であるときは、この限りでない。

 前項の規定による売却許可決定の取消しの申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 前項に規定する申立てにより売却許可決定を取り消す決定は、確定しなければその効力を生じない。

(買受けの申出後の強制競売の申立ての取下げ等)

七六条  買受けの申出があつた後に強制競売の申立てを取り下げるには、最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意を得なければならない。ただし、他に差押債権者(配当要求の終期後に強制競売又は競売の申立てをした差押債権者を除く。)がある場合において、取下げにより六二条一項二号に掲げる事項について変更が生じないときは、この限りでない。

 前項の規定は、買受けの申出があつた後に39条一項四号又は五号に掲げる文書を提出する場合について準用する。

(最高価買受申出人又は買受人のための保全処分等)

七七条  執行裁判所は、債務者又は不動産の占有者が、価格減少行為等(不動産の価格を減少させ、又は不動産の引渡しを困難にする行為をいう。以下この項において同じ。)をし、又は価格減少行為等をするおそれがあるときは、最高価買受申出人又は買受人の申立てにより、引渡命令の執行までの間、その買受けの申出の額(金銭により六六条の保証を提供した場合にあつては、当該保証の額を控除した額)に相当する金銭を納付させ、又は代金を納付させて、次に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。

 債務者又は不動産の占有者に対し、価格減少行為等を禁止し、又は一定の行為をすることを命ずる保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

 次に掲げる事項を内容とする保全処分(執行裁判所が必要があると認めるときは、公示保全処分を含む。)

イ 当該価格減少行為等をし、又はそのおそれがある者に対し、不動産に対する占有を解いて執行官に引き渡すことを命ずること。

ロ 執行官に不動産の保管をさせること。

 次に掲げる事項を内容とする保全処分及び公示保全処分

イ 前号イ及びロに掲げる事項

ロ 前号イに規定する者に対し、不動産の占有の移転を禁止することを命じ、及び不動産の使用を許すこと。

 五五条二項(一号に係る部分に限る。)の規定は前項二号又は三号に掲げる保全処分について、同条二項(二号に係る部分に限る。)の規定は前項に掲げる保全処分について、同条三項、四項本文及び五項の規定は前項の規定による決定について、同条六項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する同条五項の申立てについての裁判について、同条七項の規定はこの項において準用する同条五項の規定による決定について、同条8項及び9項並びに五五条の二の規定は前項二号又は三号に掲げる保全処分を命ずる決定について準用する。

(代金の納付)

七8条  売却許可決定が確定したときは、買受人は、裁判所書記官の定める期限までに代金を執行裁判所に納付しなければならない。

 買受人が買受けの申出の保証として提供した金銭及び前条一項の規定により納付した金銭は、代金に充てる。

 買受人が六三条二項一号又は六8条の二二項の保証を金銭の納付以外の方法で提供しているときは、執行裁判所は、最高裁判所規則で定めるところによりこれを換価し、その換価代金から換価に要した費用を控除したものを代金に充てる。この場合において、換価に要した費用は、買受人の負担とする。

 買受人は、売却代金から配当又は弁済を受けるべき債権者であるときは、売却許可決定が確定するまでに執行裁判所に申し出て、配当又は弁済を受けるべき額を差し引いて代金を配当期日又は弁済金の交付の日に納付することができる。ただし、配当期日において、買受人の受けるべき配当の額について異議の申出があつたときは、買受人は、当該配当期日から一週間以内に、異議に係る部分に相当する金銭を納付しなければならない。

 裁判所書記官は、特に必要があると認めるときは、一項の期限を変更することができる。

 一項又は前項の規定による裁判所書記官の処分に対しては、執行裁判所に異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による異議の申立てがあつた場合について準用する。

(不動産の取得の時期)

七9条  買受人は、代金を納付した時に不動産を取得する。

(代金不納付の効果)

8十条  買受人が代金を納付しないときは、売却許可決定は、その効力を失う。この場合においては、買受人は、六六条の規定により提供した保証の返還を請求することができない。

 前項前段の場合において、次順位買受けの申出があるときは、執行裁判所は、その申出について売却の許可又は不許可の決定をしなければならない。

法定地上権

8十一条  土地及びその上にある建物が債務者の所有に属する場合において、その土地又は建物の差押えがあり、その売却により所有者を異にするに至つたときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合においては、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。

(代金納付による登記の嘱託)

8二条  買受人が代金を納付したときは、裁判所書記官は、次に掲げる登記及び登記の抹消を嘱託しなければならない。

 買受人の取得した権利の移転の登記

 売却により消滅した権利又は売却により効力を失つた権利の取得若しくは仮処分に係る登記の抹消

 差押え又は仮差押えの登記の抹消

 買受人及び買受人から不動産の上に抵当権の設定を受けようとする者が、最高裁判所規則で定めるところにより、代金の納付の時までに申出をしたときは、前項の規定による嘱託は、登記の申請の代理を業とすることができる者で申出人の指定するものに嘱託情報を提供して登記所に提供させる方法によつてしなければならない。この場合において、申出人の指定する者は、遅滞なく、その嘱託情報を登記所に提供しなければならない。

 一項の規定による嘱託をするには、その嘱託情報と併せて売却許可決定があつたことを証する情報を提供しなければならない。

 一項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、買受人の負担とする。

(引渡命令)

8三条  執行裁判所は、代金を納付した買受人の申立てにより、債務者又は不動産の占有者に対し、不動産を買受人に引き渡すべき旨を命ずることができる。ただし、事件の記録上買受人に対抗することができる権原により占有していると認められる者に対しては、この限りでない。

 買受人は、代金を納付した日から六月(買受けの時に民法三百9五条一項 に規定する抵当建物使用者が占有していた建物の買受人にあつては、9月)を経過したときは、前項の申立てをすることができない。

 執行裁判所は、債務者以外の占有者に対し一項の規定による決定をする場合には、その者を審尋しなければならない。ただし、事件の記録上その者が買受人に対抗することができる権原により占有しているものでないことが明らかであるとき、又は既にその者を審尋しているときは、この限りでない。

 一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。

(占有移転禁止の保全処分等の効力)

十三条の二  強制競売の手続において、五五条一項三号又は七七条一項三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずる決定の執行がされ、かつ、買受人の申立てにより当該決定の被申立人に対して引渡命令が発せられたときは、買受人は、当該引渡命令に基づき、次に掲げる者に対し、不動産の引渡しの強制執行をすることができる。

 当該決定の執行がされたことを知つて当該不動産を占有した者

 当該決定の執行後に当該執行がされたことを知らないで当該決定の被申立人の占有を承継した者

 前項の決定の執行後に同項の不動産を占有した者は、その執行がされたことを知つて占有したものと推定する。

 一項の引渡命令について同項の決定の被申立人以外の者に対する執行文が付与されたときは、その者は、執行文の付与に対する異議の申立てにおいて、買受人に対抗することができる権原により不動産を占有していること、又は自己が同項各号のいずれにも該当しないことを理由とすることができる。

(売却代金の配当等の実施)

8四条  執行裁判所は、代金の納付があつた場合には、次項に規定する場合を除き、配当表に基づいて配当を実施しなければならない。

 債権者が一人である場合又は債権者が二人以上であつて売却代金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行裁判所は、売却代金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。

 代金の納付後に39条一項一号から六号までに掲げる文書の提出があつた場合において、他に売却代金の配当又は弁済金の交付(以下「配当等」という。)を受けるべき債権者があるときは、執行裁判所は、その債権者のために配当等を実施しなければならない。

 代金の納付後に39条一項七号又は8号に掲げる文書の提出があつた場合においても、執行裁判所は、配当等を実施しなければならない。

(配当表の作成)

8五条  執行裁判所は、配当期日において、8七条一項各号に掲げる各債権者について、その債権の元本及び利息その他の附帯の債権の額、執行費用の額並びに配当の順位及び額を定める。ただし、配当の順位及び額については、配当期日においてすべての債権者間に合意が成立した場合は、この限りでない。

 執行裁判所は、前項本文の規定により配当の順位及び額を定める場合には、民法 、商法 その他の法律の定めるところによらなければならない。

 配当期日には、一項に規定する債権者及び債務者を呼び出さなければならない。

 執行裁判所は、配当期日において、一項本文に規定する事項を定めるため必要があると認めるときは、出頭した債権者及び債務者を審尋し、かつ、即時に取り調べることができる書証の取調べをすることができる。

 一項の規定により同項本文に規定する事項(同項ただし書に規定する場合には、配当の順位及び額を除く。)が定められたときは、裁判所書記官は、配当期日において、配当表を作成しなければならない。

 配当表には、売却代金の額及び一項本文に規定する事項についての執行裁判所の定めの内容(同項ただし書に規定する場合にあつては、配当の順位及び額については、その合意の内容)を記載しなければならない。

 十六条三項及び四項の規定は、一項に規定する債権者(同条一項前段に規定する者を除く。)に対する呼出状の送達について準用する。

(売却代金)

8六条  売却代金は、次に掲げるものとする。

 不動産の代金

 六三条二項二号の規定により提供した保証のうち申出額から代金の額を控除した残額に相当するもの

 8十条一項後段の規定により買受人が返還を請求することができない保証

 六一条の規定により不動産が一括して売却された場合において、各不動産ごとに売却代金の額を定める必要があるときは、その額は、売却代金の総額を各不動産の売却基準価額に応じて案分して得た額とする。各不動産ごとの執行費用の負担についても、同様とする。

 七8条三項の規定は、一項二号又は三号に規定する保証が金銭の納付以外の方法で提供されている場合の換価について準用する。

(配当等を受けるべき債権者の範囲)

8七条  売却代金の配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。

 差押債権者(配当要求の終期までに強制競売又は一般の先取特権の実行としての競売の申立てをした差押債権者に限る。)

 配当要求の終期までに配当要求をした債権者

 差押え(最初の強制競売の開始決定に係る差押えをいう。次号において同じ。)の登記前に登記された仮差押えの債権者

 差押えの登記前に登記(民事保全法五三条二項 に規定する仮処分による仮登記を含む。)がされた先取特権(一号又は二号に掲げる債権者が有する一般の先取特権を除く。)、質権又は抵当権で売却により消滅するものを有する債権者(その抵当権に係る抵当証券の所持人を含む。)

 前項四号に掲げる債権者の権利が仮差押えの登記後に登記されたものである場合には、その債権者は、仮差押債権者が本案の訴訟において敗訴し、又は仮差押えがその効力を失つたときに限り、配当等を受けることができる。

 差押えに係る強制競売の手続が停止され、四七条六項の規定による手続を続行する旨の裁判がある場合において、執行を停止された差押債権者がその停止に係る訴訟等において敗訴したときは、差押えの登記後続行の裁判に係る差押えの登記前に登記された一項四号に規定する権利を有する債権者は、配当等を受けることができる。

(期限付債権の配当等)

88条  確定期限の到来していない債権は、配当等については、弁済期が到来したものとみなす。

 前項の債権が無利息であるときは、配当等の日から期限までの法定利率による利息との合算額がその債権の額となるべき元本額をその債権の額とみなして、配当等の額を計算しなければならない。

(配当異議の申出)

89条  配当表に記載された各債権者の債権又は配当の額について不服のある債権者及び債務者は、配当期日において、異議の申出(以下「配当異議の申出」という。)をすることができる。

 執行裁判所は、配当異議の申出のない部分に限り、配当を実施しなければならない。

(配当異議の訴え等)

9十条  配当異議の申出をした債権者及び執行力のある債務名義の正本を有しない債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、配当異議の訴えを提起しなければならない。

 前項の訴えは、執行裁判所が管轄する。

 一項の訴えは、原告が最初の口頭弁論期日に出頭しない場合には、その責めに帰することができない事由により出頭しないときを除き、却下しなければならない。

 一項の訴えの判決においては、配当表を変更し、又は新たな配当表の調製のために、配当表を取り消さなければならない。

 執行力のある債務名義の正本を有する債権者に対し配当異議の申出をした債務者は、請求異議の訴え又は民事訴訟法百十七条一項 の訴えを提起しなければならない。

 配当異議の申出をした債権者又は債務者が、配当期日(知れていない抵当証券の所持人に対する配当異議の申出にあつては、その所持人を知つた日)から一週間以内(買受人が七8条四項ただし書の規定により金銭を納付すべき場合にあつては、二週間以内)に、執行裁判所に対し、一項の訴えを提起したことの証明をしないとき、又は前項の訴えを提起したことの証明及びその訴えに係る執行停止の裁判の正本の提出をしないときは、配当異議の申出は、取り下げたものとみなす。

(配当等の額の供託)

9一条  配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、裁判所書記官は、その配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。

 停止条件付又は不確定期限付であるとき。

 仮差押債権者の債権であるとき。

 39条一項七号又は百8三条一項六号に掲げる文書が提出されているとき。

 その債権に係る先取特権、質権又は抵当権(以下この項において「先取特権等」という。)の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき。

 その債権に係る先取特権等につき仮登記又は民事保全法五三条二項 に規定する仮処分による仮登記がされたものであるとき。

 仮差押え又は執行停止に係る差押えの登記後に登記された先取特権等があるため配当額が定まらないとき。

 配当異議の訴えが提起されたとき。

 裁判所書記官は、配当等の受領のために執行裁判所に出頭しなかつた債権者(知れていない抵当証券の所持人を含む。)に対する配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。

(権利確定等に伴う配当等の実施)

9二条  前条一項の規定による供託がされた場合において、その供託の事由が消滅したときは、執行裁判所は、供託金について配当等を実施しなければならない。

 前項の規定により配当を実施すべき場合において、前条一項一号から五号までに掲げる事由による供託に係る債権者若しくは同項六号に掲げる事由による供託に係る仮差押債権者若しくは執行を停止された差押債権者に対して配当を実施することができなくなつたとき、又は同項七号に掲げる事由による供託に係る債権者が債務者の提起した配当異議の訴えにおいて敗訴したときは、執行裁判所は、配当異議の申出をしなかつた債権者のためにも配当表を変更しなければならない。

 

      三目 強制管理

(開始決定等)

9三条  執行裁判所は、強制管理の手続を開始するには、強制管理の開始決定をし、その開始決定において、債権者のために不動産を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し収益の処分を禁止し、及び債務者が賃貸料の請求権その他の当該不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「給付請求権」という。)を有するときは、債務者に対して当該給付をする義務を負う者(以下「給付義務者」という。)に対しその給付の目的物を管理人に交付すべき旨を命じなければならない。

 前項の収益は、後に収穫すべき天然果実及び既に弁済期が到来し、又は後に弁済期が到来すべき法定果実とする。

 一項の開始決定は、債務者及び給付義務者に送達しなければならない。

 給付義務者に対する一項の開始決定の効力は、開始決定が当該給付義務者に送達された時に生ずる。

 強制管理の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(二重開始決定)

9三条の二  既に強制管理の開始決定がされ、又は百8十条二号に規定する担保不動産収益執行の開始決定がされた不動産について強制管理の申立てがあつたときは、執行裁判所は、更に強制管理の開始決定をするものとする。

(給付義務者に対する競合する債権差押命令等の陳述の催告)

9三条の三  裁判所書記官は、給付義務者に強制管理の開始決定を送達するに際し、当該給付義務者に対し、開始決定の送達の日から二週間以内に給付請求権に対する差押命令又は差押処分の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。この場合においては、百四七条二項の規定を準用する。

(給付請求権に対する競合する債権差押命令等の効力の停止等)

9三条の四  9三条四項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する差押命令又は差押処分であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。ただし、強制管理の開始決定の給付義務者に対する効力の発生が百六五条各号(百六七条の十四において百六五条各号(三号及び四号を除く。)の規定を準用する場合及び百9三条二項において準用する場合を含む。)に掲げる時後であるときは、この限りでない。

 9三条四項の規定により強制管理の開始決定の効力が給付義務者に対して生じたときは、給付請求権に対する仮差押命令であつて既に効力が生じていたものは、その効力を停止する。

 一項の差押命令又は差押処分の債権者、同項の差押命令又は差押処分が効力を停止する時までに当該債権執行(百四三条に規定する債権執行をいう。)又は少額訴訟債権執行(百六七条の二二項に規定する少額訴訟債権執行をいう。)の手続において配当要求をした債権者及び前項の仮差押命令の債権者は、百七条四項の規定にかかわらず、前二項の強制管理の手続において配当等を受けることができる。

(管理人の選任)

9四条  執行裁判所は、強制管理の開始決定と同時に、管理人を選任しなければならない。

 信託会社(信託業法三条 又は五三条一項 の免許を受けた者をいう。)、銀行その他の法人は、管理人となることができる。

(管理人の権限)

9五条  管理人は、強制管理の開始決定がされた不動産について、管理並びに収益の収取及び換価をすることができる。

 管理人は、民法六百二条 に定める期間を超えて不動産を賃貸するには、債務者の同意を得なければならない。

 管理人が数人あるときは、共同してその職務を行う。ただし、執行裁判所の許可を受けて、職務を分掌することができる。

 管理人が数人あるときは、第三者の意思表示は、その一人に対してすれば足りる。

(強制管理のための不動産の占有等)

9六条  管理人は、不動産について、債務者の占有を解いて自らこれを占有することができる。

 管理人は、前項の場合において、閉鎖した戸を開く必要があると認めるときは、執行官に対し援助を求めることができる。

 五七条三項の規定は、前項の規定により援助を求められた執行官について準用する。

(建物使用の許可)

9七条  債務者の居住する建物について強制管理の開始決定がされた場合において、債務者が他に居住すべき場所を得ることができないときは、執行裁判所は、申立てにより、債務者及びその者と生計を一にする同居の親族(婚姻又は縁組の届出をしていないが債務者と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にある者を含む。以下「債務者等」という。)の居住に必要な限度において、期間を定めて、その建物の使用を許可することができる。

 債務者が管理人の管理を妨げたとき、又は事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を取り消し、又は変更することができる。

 前二項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

(収益等の分与)

98条  強制管理により債務者の生活が著しく困窮することとなるときは、執行裁判所は、申立てにより、管理人に対し、収益又はその換価代金からその困窮の程度に応じ必要な金銭又は収益を債務者に分与すべき旨を命ずることができる。

 前条二項の規定は前項の規定による決定について、同条三項の規定は前項の申立て又はこの項において準用する前条二項の申立てについての決定について準用する。

(管理人の監督)

99条  管理人は、執行裁判所が監督する。

(管理人の注意義務)

百条  管理人は、善良な管理者の注意をもつてその職務を行わなければならない。

 管理人が前項の注意を怠つたときは、その管理人は、利害関係を有する者に対し、連帯して損害を賠償する責めに任ずる。

(管理人の報酬等)

百一条  管理人は、強制管理のため必要な費用の前払及び執行裁判所の定める報酬を受けることができる。

 前項の規定による決定に対しては、執行抗告をすることができる。

(管理人の解任)

百二条  重要な事由があるときは、執行裁判所は、利害関係を有する者の申立てにより、又は職権で、管理人を解任することができる。この場合においては、その管理人を審尋しなければならない。

(計算の報告義務)

百三条  管理人の任務が終了した場合においては、管理人又はその承継人は、遅滞なく、執行裁判所に計算の報告をしなければならない。

(強制管理の停止)

百四条  39条一項七号又は8号に掲げる文書の提出があつた場合においては、強制管理は、配当等の手続を除き、その時の態様で継続することができる。この場合においては、管理人は、配当等に充てるべき金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

 前項の規定により供託された金銭の額で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができるときは、執行裁判所は、配当等の手続を除き、強制管理の手続を取り消さなければならない。

(配当要求)

百五条  執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び百8一条一項各号に掲げる文書により一般の先取特権を有することを証明した債権者は、執行裁判所に対し、配当要求をすることができる。

 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(配当等に充てるべき金銭等)

百六条  配当等に充てるべき金銭は、98条一項の規定による分与をした後の収益又はその換価代金から、不動産に対して課される租税その他の公課及び管理人の報酬その他の必要な費用を控除したものとする。

 配当等に充てるべき金銭を生ずる見込みがないときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。

(管理人による配当等の実施)

百七条  管理人は、前条一項に規定する費用を支払い、執行裁判所の定める期間ごとに、配当等に充てるべき金銭の額を計算して、配当等を実施しなければならない。

 債権者が一人である場合又は債権者が二人以上であつて配当等に充てるべき金銭で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、管理人は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。

 前項に規定する場合を除き、配当等に充てるべき金銭の配当について債権者間に協議が調つたときは、管理人は、その協議に従い配当を実施する。

 配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる者とする。

 差押債権者のうち次のイからハまでのいずれかに該当するもの

イ 一項の期間の満了までに強制管理の申立てをしたもの

ロ 一項の期間の満了までに一般の先取特権の実行として百8十条二号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの

ハ 一項の期間の満了までに百8十条二号に規定する担保不動産収益執行の申立てをしたもの(ロに掲げるものを除く。)であつて、当該申立てが最初の強制管理の開始決定に係る差押えの登記前に登記(民事保全法五三条二項 に規定する保全仮登記を含む。)がされた担保権に基づくもの

 仮差押債権者(一項の期間の満了までに、強制管理の方法による仮差押えの執行の申立てをしたものに限る。)

 一項の期間の満了までに配当要求をした債権者

 三項の協議が調わないときは、管理人は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

(管理人による配当等の額の供託)

百8条  配当等を受けるべき債権者の債権について9一条一項各号(七号を除く。)に掲げる事由があるときは、管理人は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。債権者が配当等の受領のために出頭しなかつたときも、同様とする。

(執行裁判所による配当等の実施)

百9条  執行裁判所は、百七条五項の規定による届出があつた場合には直ちに、百四条一項又は前条の規定による届出があつた場合には供託の事由が消滅したときに、配当等の手続を実施しなければならない。

(弁済による強制管理の手続の取消し)

百十条  各債権者が配当等によりその債権及び執行費用の全部の弁済を受けたときは、執行裁判所は、強制管理の手続を取り消さなければならない。

(強制競売の規定の準用)

百十一条  四十六条一項、四十七条二項、六項本文及び七項、四十8条、五十三条、五十四条、8十四条三項及び四項、8十七条二項及び三項並びに8十8条の規定は強制管理について、8十四条一項及び二項、8十五条並びに8十9条から9十二条までの規定は百9条の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。この場合において、8十四条三項及び四項中「代金の納付後」とあるのは、「百七条一項の期間の経過後」と読み替えるものとする。

     二款 船舶に対する強制執行

 

(船舶執行の方法)

百十二条  総トン数20トン以上の船舶(端舟その他ろかい又は主としてろかいをもつて運転する舟を除く。以下この節及び次章において「船舶」という。)に対する強制執行(以下「船舶執行」という。)は、強制競売の方法により行う。

(執行裁判所)

十三条  船舶執行については、強制競売の開始決定の時の船舶の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

(開始決定等)

百十四条  執行裁判所は、強制競売の手続を開始するには、強制競売の開始決定をし、かつ、執行官に対し、船舶の国籍を証する文書その他の船舶の航行のために必要な文書(以下「船舶国籍証書等」という。)を取り上げて執行裁判所に提出すべきことを命じなければならない。ただし、その開始決定前にされた開始決定により船舶国籍証書等が取り上げられているときは、執行官に対する命令を要しない。

 強制競売の開始決定においては、債権者のために船舶を差し押さえる旨を宣言し、かつ、債務者に対し船舶の出航を禁止しなければならない。

 強制競売の開始決定の送達又は差押えの登記前に執行官が船舶国籍証書等を取り上げたときは、差押えの効力は、その取上げの時に生ずる。

(船舶執行の申立て前の船舶国籍証書等の引渡命令)

百十五条  船舶執行の申立て前に船舶国籍証書等を取り上げなければ船舶執行が著しく困難となるおそれがあるときは、その船舶の船籍の所在地(船籍のない船舶にあつては、最高裁判所の指定する地)を管轄する地方裁判所は、申立てにより、債務者に対し、船舶国籍証書等を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。急迫の事情があるときは、船舶の所在地を管轄する地方裁判所も、この命令を発することができる。

 前項の規定による裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 一項の申立てをするには、執行力のある債務名義の正本を提示し、かつ、同項に規定する事由を疎明しなければならない。

 執行官は、船舶国籍証書等の引渡しを受けた日から五日以内に債権者が船舶執行の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、その船舶国籍証書等を債務者に返還しなければならない。

 一項の規定による決定に対しては、即時抗告をすることができる。

 前項の即時抗告は、執行停止の効力を有しない。

 五十五条8項から十項までの規定は、一項の規定による決定について準用する。

(保管人の選任等)

百十六条  執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、必要があると認めるときは、強制競売の開始決定がされた船舶について保管人を選任することができる。

 前項の保管人が船舶の保管のために要した費用(四項において準用する百一条一項の報酬を含む。)は、手続費用とする。

 一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 9十四条二項、9十六条及び9十9条から百三条までの規定は、一項の保管人について準用する。

(保証の提供による強制競売の手続の取消し)

百十七条  差押債権者の債権について、39条一項七号又は8号に掲げる文書が提出されている場合において、債務者が差押債権者及び保証の提供の時(配当要求の終期後にあつては、その終期)までに配当要求をした債権者の債権及び執行費用の総額に相当する保証を買受けの申出前に提供したときは、執行裁判所は、申立てにより、配当等の手続を除き、強制競売の手続を取り消さなければならない。

 前項に規定する文書の提出による執行停止がその効力を失つたときは、執行裁判所は、同項の規定により提供された保証について、同項の債権者のために配当等を実施しなければならない。この場合において、執行裁判所は、保証の提供として供託された有価証券を取り戻すことができる。

 一項の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 十二条の規定は、一項の規定による決定については適用しない。

 十五条の規定は一項の保証の提供について、七十8条三項の規定は一項の保証が金銭の供託以外の方法で提供されている場合の換価について準用する。

(航行許可)

百十8条  執行裁判所は、営業上の必要その他相当の事由があると認める場合において、各債権者並びに最高価買受申出人又は買受人及び次順位買受申出人の同意があるときは、債務者の申立てにより、船舶の航行を許可することができる。

 前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。

(事件の移送)

百十9条  執行裁判所は、強制競売の開始決定がされた船舶が管轄区域外の地に所在することとなつた場合には、船舶の所在地を管轄する地方裁判所に事件を移送することができる。

 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(船舶国籍証書等の取上げができない場合の強制競売の手続の取消し)

百20条  執行官が強制競売の開始決定の発せられた日から二週間以内に船舶国籍証書等を取り上げることができないときは、執行裁判所は、強制競売の手続を取り消さなければならない。

(不動産に対する強制競売の規定の準用)

百二一条  前款二目(四十五条一項、四十六条二項、四十8条、五十四条、五十五条一項(二号に係る部分に限る。)、五十六条、六十四条の二、8十一条及び8十二条を除く。)の規定は船舶執行について、四十8条、五十四条及び8十二条の規定は船舶法 (明治3二年法律四十六号)一条 に規定する日本船舶に対する強制執行について準用する。

 

     三款 動産に対する強制執行

(動産執行の開始等)

百2二条  動産(登記することができない土地の定着物、土地から分離する前の天然果実で一月以内に収穫することが確実であるもの及び裏書の禁止されている有価証券以外の有価証券を含む。以下この節、次章及び四章において同じ。)に対する強制執行(以下「動産執行」という。)は、執行官の目的物に対する差押えにより開始する。

 動産執行においては、執行官は、差押債権者のためにその債権及び執行費用の弁済を受領することができる。

(債務者の占有する動産の差押え)

百2三条  債務者の占有する動産の差押えは、執行官がその動産を占有して行う。

 執行官は、前項の差押えをするに際し、債務者の住居その他債務者の占有する場所に立ち入り、その場所において、又は債務者の占有する金庫その他の容器について目的物を捜索することができる。この場合において、必要があるときは、閉鎖した戸及び金庫その他の容器を開くため必要な処分をすることができる。

 執行官は、相当であると認めるときは、債務者に差し押さえた動産(以下「差押物」という。)を保管させることができる。この場合においては、差押えは、差押物について封印その他の方法で差押えの表示をしたときに限り、その効力を有する。

 執行官は、前項の規定により債務者に差押物を保管させる場合において、相当であると認めるときは、その使用を許可することができる。

 執行官は、必要があると認めるときは、三項の規定により債務者に保管させた差押物を自ら保管し、又は前項の規定による許可を取り消すことができる。

(債務者以外の者の占有する動産の差押え)

百2四条  前条一項及び三項から五項までの規定は、債権者又は提出を拒まない第三者の占有する動産の差押えについて準用する。

(二重差押えの禁止及び事件の併合)

百2五条  執行官は、差押物又は仮差押えの執行をした動産を更に差し押さえることができない。

 差押えを受けた債務者に対しその差押えの場所について更に動産執行の申立てがあつた場合においては、執行官は、まだ差し押さえていない動産があるときはこれを差し押さえ、差し押さえるべき動産がないときはその旨を明らかにして、その動産執行事件と先の動産執行事件とを併合しなければならない。仮差押えの執行を受けた債務者に対しその執行の場所について更に動産執行の申立てがあつたときも、同様とする。

 前項前段の規定により二個の動産執行事件が併合されたときは、後の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、先の事件において差し押さえられたものとみなし、後の事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。先の差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が停止され、若しくは取り消されたときは、先の事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、後の事件のために差し押さえられたものとみなす。

 二項後段の規定により仮差押執行事件と動産執行事件とが併合されたときは、仮差押えの執行がされた動産は、併合の時に、動産執行事件において差し押さえられたものとみなし、仮差押執行事件の申立ては、配当要求の効力を生ずる。差押債権者が動産執行の申立てを取り下げたとき、又はその申立てに係る手続が取り消されたときは、動産執行事件において差し押さえられた動産は、併合の時に、仮差押執行事件において仮差押えの執行がされたものとみなす。

(差押えの効力が及ぶ範囲)

百2六条  差押えの効力は、差押物から生ずる天然の産出物に及ぶ。

(差押物の引渡命令)

百2七条  差押物を第三者が占有することとなつたときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その第三者に対し、差押物を執行官に引き渡すべき旨を命ずることができる。

 前項の申立ては、差押物を第三者が占有していることを知つた日から一週間以内にしなければならない。

 一項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 五五条8項から十項までの規定は、一項の規定による決定について準用する。

(超過差押えの禁止等)

百28条  動産の差押えは、差押債権者の債権及び執行費用の弁済に必要な限度を超えてはならない。

 差押えの後にその差押えが前項の限度を超えることが明らかとなつたときは、執行官は、その超える限度において差押えを取り消さなければならない。

(剰余を生ずる見込みのない場合の差押えの禁止等)

百29条  差し押さえるべき動産の売得金の額が手続費用の額を超える見込みがないときは、執行官は、差押えをしてはならない。

 差押物の売得金の額が手続費用及び差押債権者の債権に優先する債権の額の合計額以上となる見込みがないときは、執行官は、差押えを取り消さなければならない。

(売却の見込みのない差押物の差押えの取消し)

百三十条  差押物について相当な方法による売却の実施をしてもなお売却の見込みがないときは、執行官は、その差押物の差押えを取り消すことができる。

(差押禁止動産)

百三一条  次に掲げる動産は、差し押さえてはならない。

 債務者等の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具

 債務者等の一月間の生活に必要な食料及び燃料

 標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭

 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物

 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物

 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)

 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの

 仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物

 債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿及びこれらに類する書類

  債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物

 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具

十二  発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの

十三  債務者等に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物

十四  建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

(差押禁止動産の範囲の変更)

百三二条  執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押えの全部若しくは一部の取消しを命じ、又は前条各号に掲げる動産の差押えを許すことができる。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押えが取り消された動産の差押えを許し、又は同項の規定による差押えの全部若しくは一部の取消しを命ずることができる。

 前二項の規定により差押えの取消しの命令を求める申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで強制執行の停止を命ずることができる。

 一項又は二項の申立てを却下する決定及びこれらの規定により差押えを許す決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

先取特権者等の配当要求)

百三三条  先取特権又は質権を有する者は、その権利を証する文書を提出して、配当要求をすることができる。

(売却の方法)

百三四条  執行官は、差押物を売却するには、入札又は競り売りのほか、最高裁判所規則で定める方法によらなければならない。

(売却の場所の秩序維持等に関する規定の準用)

百三五条  六五条及び六8条の規定は、差押物を売却する場合について準用する。

(手形等の提示義務)

百三六条  執行官は、手形、小切手その他の金銭の支払を目的とする有価証券でその権利の行使のため定められた期間内に引受け若しくは支払のための提示又は支払の請求(以下「提示等」という。)を要するもの(以下「手形等」という。)を差し押さえた場合において、その期間の始期が到来したときは、債務者に代わつて手形等の提示等をしなければならない。

(執行停止中の売却)

百三七条  三9条一項七号又は8号に掲げる文書の提出があつた場合において、差押物について著しい価額の減少を生ずるおそれがあるとき、又はその保管のために不相応な費用を要するときは、執行官は、その差押物を売却することができる。

 執行官は、前項の規定により差押物を売却したときは、その売得金を供託しなければならない。

(有価証券の裏書等)

百三8条  執行官は、有価証券を売却したときは、買受人のために、債務者に代わつて裏書又は名義書換えに必要な行為をすることができる。

(執行官による配当等の実施)

百三9条  債権者が一人である場合又は債権者が二人以上であつて売得金、差押金銭若しくは手形等の支払金(以下「売得金等」という。)で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができる場合には、執行官は、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。

 前項に規定する場合を除き、売得金等の配当について債権者間に協議が調つたときは、執行官は、その協議に従い配当を実施する。

 前項の協議が調わないときは、執行官は、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

 8四条三項及び四項並びに88条の規定は、一項又は二項の規定により配当等を実施する場合について準用する。

(配当等を受けるべき債権者の範囲)

百四条  配当等を受けるべき債権者は、差押債権者のほか、売得金については執行官がその交付を受けるまで(百三七条又は民事保全法四9条三項 の規定により供託された売得金については、動産執行が続行されることとなるまで)に、差押金銭についてはその差押えをするまでに、手形等の支払金についてはその支払を受けるまでに配当要求をした債権者とする。

(執行官の供託)

百四一条  百三9条一項又は二項の規定により配当等を実施する場合において、配当等を受けるべき債権者の債権について次に掲げる事由があるときは、執行官は、その配当等の額に相当する金銭を供託し、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

 停止条件付又は不確定期限付であるとき。

 仮差押債権者の債権であるとき。

 三9条一項七号又は百9二条において準用する百8三条一項六号に掲げる文書が提出されているとき。

 その債権に係る先取特権又は質権の実行を一時禁止する裁判の正本が提出されているとき。

 執行官は、配当等の受領のために出頭しなかつた債権者に対する配当等の額に相当する金銭を供託しなければならない。

(執行裁判所による配当等の実施)

百四二条  執行裁判所は、百三9条三項の規定による届出があつた場合には直ちに、前条一項の規定による届出があつた場合には供託の事由が消滅したときに、配当等の手続を実施しなければならない。

 8四条、8五条及び88条から9二条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。

 

     四款 債権及びその他の財産権に対する強制執行

      一目 債権執行等

(債権執行の開始)

百四三条  金銭の支払又は船舶若しくは動産の引渡しを目的とする債権(動産執行の目的となる有価証券が発行されている債権を除く。以下この節において「債権」という。)に対する強制執行(百六七条の二二項に規定する少額訴訟債権執行を除く。以下この節において「債権執行」という。)は、執行裁判所の差押命令により開始する。

(執行裁判所)

百四四条  債権執行については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、この普通裁判籍がないときは差し押さえるべき債権の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

 差し押さえるべき債権は、その債権の債務者(以下「第三債務者」という。)の普通裁判籍の所在地にあるものとする。ただし、船舶又は動産の引渡しを目的とする債権及び物上の担保権により担保される債権は、その物の所在地にあるものとする。

 差押えに係る債権(差押命令により差し押さえられた債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押命令が発せられた場合において、差押命令を発した執行裁判所が異なるときは、執行裁判所は、事件を他の執行裁判所に移送することができる。

 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(差押命令)

百四五条  執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。

 差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。

 差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。

 差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。

 差押命令の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(差押えの範囲)

百四六条  執行裁判所は、差し押さえるべき債権の全部について差押命令を発することができる。

 差し押さえた債権の価額が差押債権者の債権及び執行費用の額を超えるときは、執行裁判所は、他の債権を差し押さえてはならない。

(第三債務者の陳述の催告)

百四七条  差押債権者の申立てがあるときは、裁判所書記官は、差押命令を送達するに際し、第三債務者に対し、差押命令の送達の日から二週間以内に差押えに係る債権の存否その他の最高裁判所規則で定める事項について陳述すべき旨を催告しなければならない。

 第三債務者は、前項の規定による催告に対して、故意又は過失により、陳述をしなかつたとき、又は不実の陳述をしたときは、これによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。

(債権証書の引渡し)

百四8条  差押えに係る債権について証書があるときは、債務者は、差押債権者に対し、その証書を引き渡さなければならない。

 差押債権者は、差押命令に基づいて、百六9条に規定する動産の引渡しの強制執行の方法により前項の証書の引渡しを受けることができる。

(差押えが一部競合した場合の効力)

百四9条  債権の一部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その残余の部分を超えて差押命令が発せられたときは、各差押え又は仮差押えの執行の効力は、その債権の全部に及ぶ。債権の全部が差し押さえられ、又は仮差押えの執行を受けた場合において、その債権の一部について差押命令が発せられたときのその差押えの効力も、同様とする。

先取特権等によつて担保される債権の差押えの登記等の嘱託)

百五条  登記又は登録(以下「登記等」という。)のされた先取特権、質権又は抵当権によつて担保される債権に対する差押命令が効力を生じたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その債権について差押えがされた旨の登記等を嘱託しなければならない。

(継続的給付の差押え)

百五一条  給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。

(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)

百五一条の二  債権者が次に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、三十条一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち確定期限が到来していないものについても、債権執行を開始することができる。

 民法七百五二条 の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務

 民法七百六条 の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務

 民法七百六六条 (同法七百四9条 、七百七一条及び七百88条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務

 民法8百七七条 から8百8条 までの規定による扶養の義務

 前項の規定により開始する債権執行においては、各定期金債権について、その確定期限の到来後に弁済期が到来する給料その他継続的給付に係る債権のみを差し押さえることができる。

(差押禁止債権)

百五二条  次に掲げる債権については、その支払期に受けるべき給付の四分の三に相当する部分(その額が標準的な世帯の必要生計費を勘案して政令で定める額を超えるときは、政令で定める額に相当する部分)は、差し押さえてはならない。

 債務者が国及び地方公共団体以外の者から生計を維持するために支給を受ける継続的給付に係る債権

 給料、賃金、俸給、退職年金及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る債権

 退職手当及びその性質を有する給与に係る債権については、その給付の四分の三に相当する部分は、差し押さえてはならない。

 債権者が前条一項各号に掲げる義務に係る金銭債権(金銭の支払を目的とする債権をいう。以下同じ。)を請求する場合における前二項の規定の適用については、前二項中「四分の三」とあるのは、「二分の一」とする。

(差押禁止債権の範囲の変更)

百五三条  執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押命令の全部若しくは一部を取り消し、又は前条の規定により差し押さえてはならない債権の部分について差押命令を発することができる。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押命令が取り消された債権を差し押さえ、又は同項の規定による差押命令の全部若しくは一部を取り消すことができる。

 前二項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、第三債務者に対し、支払その他の給付の禁止を命ずることができる。

 一項又は二項の規定による差押命令の取消しの申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 三項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

(配当要求)

百五四条  執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、配当要求をすることができる。

 前項の配当要求があつたときは、その旨を記載した文書は、第三債務者に送達しなければならない。

 配当要求を却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(差押債権者の金銭債権の取立て)

百五五条  金銭債権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、その債権を取り立てることができる。ただし、差押債権者の債権及び執行費用の額を超えて支払を受けることができない。

 差押債権者が第三債務者から支払を受けたときは、その債権及び執行費用は、支払を受けた額の限度で、弁済されたものとみなす。

 差押債権者は、前項の支払を受けたときは、直ちに、その旨を執行裁判所に届け出なければならない。

(第三債務者の供託)

百五六条  第三債務者は、差押えに係る金銭債権(差押命令により差し押さえられた金銭債権に限る。次項において同じ。)の全額に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託することができる。

 第三債務者は、次条一項に規定する訴えの訴状の送達を受ける時までに、差押えに係る金銭債権のうち差し押さえられていない部分を超えて発せられた差押命令、差押処分又は仮差押命令の送達を受けたときはその債権の全額に相当する金銭を、配当要求があつた旨を記載した文書の送達を受けたときは差し押さえられた部分に相当する金銭を債務の履行地の供託所に供託しなければならない。

 第三債務者は、前二項の規定による供託をしたときは、その事情を執行裁判所に届け出なければならない。

(取立訴訟)

百五七条  差押債権者が第三債務者に対し差し押さえた債権に係る給付を求める訴え(以下「取立訴訟」という。)を提起したときは、受訴裁判所は、第三債務者の申立てにより、他の債権者で訴状の送達の時までにその債権を差し押さえたものに対し、共同訴訟人として原告に参加すべきことを命ずることができる。

 前項の裁判は、口頭弁論を経ないですることができる。

 取立訴訟の判決の効力は、一項の規定により参加すべきことを命じられた差押債権者で参加しなかつたものにも及ぶ。

 前条二項の規定により供託の義務を負う第三債務者に対する取立訴訟において、原告の請求を認容するときは、受訴裁判所は、請求に係る金銭の支払は供託の方法によりすべき旨を判決の主文に掲げなければならない。

 強制執行又は競売において、前項に規定する判決の原告が配当等を受けるべきときは、その配当等の額に相当する金銭は、供託しなければならない。

(債権者の損害賠償)

百五8条  差押債権者は、債務者に対し、差し押さえた債権の行使を怠つたことによつて生じた損害を賠償する責めに任ずる。

(転付命令)

百五9条  執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、支払に代えて券面額で差し押さえられた金銭債権を差押債権者に転付する命令(以下「転付命令」という。)を発することができる。

 転付命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。

 転付命令が第三債務者に送達される時までに、転付命令に係る金銭債権について、他の債権者が差押え、仮差押えの執行又は配当要求をしたときは、転付命令は、その効力を生じない。

 一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 転付命令は、確定しなければその効力を生じない。

 転付命令が発せられた後に三9条一項七号又は8号に掲げる文書を提出したことを理由として執行抗告がされたときは、抗告裁判所は、他の理由により転付命令を取り消す場合を除き、執行抗告についての裁判を留保しなければならない。

(転付命令の効力)

百六十条  差押命令及び転付命令が確定した場合においては、差押債権者の債権及び執行費用は、転付命令に係る金銭債権が存する限り、その券面額で、転付命令が第三債務者に送達された時に弁済されたものとみなす。

(譲渡命令等)

百六一条  差し押さえられた債権が、条件付若しくは期限付であるとき、又は反対給付に係ることその他の事由によりその取立てが困難であるときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てにより、その債権を執行裁判所が定めた価額で支払に代えて差押債権者に譲渡する命令(以下「譲渡命令」という。)、取立てに代えて、執行裁判所の定める方法によりその債権の売却を執行官に命ずる命令(以下「売却命令」という。)又は管理人を選任してその債権の管理を命ずる命令(以下「管理命令」という。)その他相当な方法による換価を命ずる命令を発することができる。

 執行裁判所は、前項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。ただし、債務者が外国にあるとき、又はその住所が知れないときは、この限りでない。

 一項の申立てについての決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 一項の規定による決定は、確定しなければその効力を生じない。

 執行官は、差し押さえられた債権を売却したときは、債務者に代わり、第三債務者に対し、確定日付のある証書によりその譲渡の通知をしなければならない。

 百五9条二項及び三項並びに前条の規定は譲渡命令について、百五9条六項の規定は譲渡命令に対する執行抗告について、六五条及び六8条の規定は売却命令に基づく執行官の売却について、百五9条二項の規定は管理命令について、8四条三項及び四項、88条、9四条二項、9五条一項、三項及び四項、98条から百四条まで並びに百六条から百十条までの規定は管理命令に基づく管理について準用する。この場合において、8四条三項及び四項中「代金の納付後」とあるのは、「百六一条において準用する百七条一項の期間の経過後」と読み替えるものとする。

(船舶の引渡請求権の差押命令の執行)

百六二条  船舶の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、第三債務者に対し、船舶の所在地を管轄する地方裁判所の選任する保管人にその船舶を引き渡すべきことを請求することができる。

 前項の規定により保管人が引渡しを受けた船舶の強制執行は、船舶執行の方法により行う。

 一項に規定する保管人が船舶の引渡しを受けた場合において、その船舶について強制競売の開始決定がされたときは、その保管人は、百十六条一項の規定により選任された保管人とみなす。

(動産の引渡請求権の差押命令の執行)

百六三条  動産の引渡請求権を差し押さえた債権者は、債務者に対して差押命令が送達された日から一週間を経過したときは、第三債務者に対し、差押債権者の申立てを受けた執行官にその動産を引き渡すべきことを請求することができる。

 執行官は、動産の引渡しを受けたときは、動産執行の売却の手続によりこれを売却し、その売得金を執行裁判所に提出しなければならない。

(移転登記等の嘱託)

百六四条  百五十条に規定する債権について、転付命令若しくは譲渡命令が確定したとき、又は売却命令による売却が終了したときは、裁判所書記官は、申立てにより、その債権を取得した差押債権者又は買受人のために先取特権、質権又は抵当権の移転の登記等を嘱託し、及び同条の規定による登記等の抹消を嘱託しなければならない。

 前項の規定による嘱託をする場合(次項に規定する場合を除く。)においては、嘱託書に、転付命令若しくは譲渡命令の正本又は売却命令に基づく売却について執行官が作成した文書の謄本を添付しなければならない。

 一項の規定による嘱託をする場合において、不動産登記法 (平成六年法律百2三号)十六条二項 (他の法令において準用する場合を含む。)において準用する同法十8条 の規定による嘱託をするときは、その嘱託情報と併せて転付命令若しくは譲渡命令があつたことを証する情報又は売却命令に基づく売却について執行官が作成した文書の内容を証する情報を提供しなければならない。

 一項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、同項に規定する差押債権者又は買受人の負担とする。

 百五十条の規定により登記等がされた場合において、差し押さえられた債権について支払又は供託があつたことを証する文書が提出されたときは、裁判所書記官は、申立てにより、その登記等の抹消を嘱託しなければならない。債権執行の申立てが取り下げられたとき、又は差押命令の取消決定が確定したときも、同様とする。

 前項の規定による嘱託に要する登録免許税その他の費用は、同項前段の場合にあつては債務者の負担とし、同項後段の場合にあつては差押債権者の負担とする。

(配当等を受けるべき債権者の範囲)

百六五条  配当等を受けるべき債権者は、次に掲げる時までに差押え、仮差押えの執行又は配当要求をした債権者とする。

 第三債務者が百五六条一項又は二項の規定による供託をした時

 取立訴訟の訴状が第三債務者に送達された時

 売却命令により執行官が売得金の交付を受けた時

 動産引渡請求権の差押えの場合にあつては、執行官がその動産の引渡しを受けた時

(配当等の実施)

百六六条  執行裁判所は、百六一条六項において準用する百9条に規定する場合のほか、次に掲げる場合には、配当等を実施しなければならない。

 百五六条一項若しくは二項又は百五七条五項の規定による供託がされた場合

 売却命令による売却がされた場合

 百六三条二項の規定により売得金が提出された場合

 8四条、8五条及び88条から9二条までの規定は、前項の規定により執行裁判所が実施する配当等の手続について準用する。

(その他の財産権に対する強制執行

百六七条  不動産、船舶、動産及び債権以外の財産権(以下この条において「その他の財産権」という。)に対する強制執行については、特別の定めがあるもののほか、債権執行の例による。

 その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものは、強制執行の管轄については、その登記等の地にあるものとする。

 その他の財産権で第三債務者又はこれに準ずる者がないものに対する差押えの効力は、差押命令が債務者に送達された時に生ずる。

 その他の財産権で権利の移転について登記等を要するものについて差押えの登記等が差押命令の送達前にされた場合には、差押えの効力は、差押えの登記等がされた時に生ずる。ただし、その他の財産権で権利の処分の制限について登記等をしなければその効力が生じないものに対する差押えの効力は、差押えの登記等が差押命令の送達後にされた場合においても、差押えの登記等がされた時に生ずる。

 四8条、五四条及び8二条の規定は、権利の移転について登記等を要するその他の財産権の強制執行に関する登記等について準用する。

      二目 少額訴訟債権執行

少額訴訟債権執行の開始等)

百六七条の二  次に掲げる少額訴訟に係る債務名義による金銭債権に対する強制執行は、前目の定めるところにより裁判所が行うほか、二条の規定にかかわらず、申立てにより、この目の定めるところにより裁判所書記官が行う。

 少額訴訟における確定判決

 仮執行の宣言を付した少額訴訟の判決

 少額訴訟における訴訟費用又は和解の費用の負担の額を定める裁判所書記官の処分

 少額訴訟における和解又は認諾の調書

 少額訴訟における民事訴訟法二百七五条の二一項 の規定による和解に代わる決定

 前項の規定により裁判所書記官が行う同項の強制執行(以下この目において「少額訴訟債権執行」という。)は、裁判所書記官の差押処分により開始する。

 少額訴訟債権執行の申立ては、次の各号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める簡易裁判所裁判所書記官に対してする。

 一項一号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所

 一項二号に掲げる債務名義 同号の判決をした簡易裁判所

 一項三号に掲げる債務名義 同号の処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所

 一項四号に掲げる債務名義 同号の和解が成立し、又は同号の認諾がされた簡易裁判所

 一項五号に掲げる債務名義 同号の和解に代わる決定をした簡易裁判所

 百四四条三項及び四項の規定は、差押えに係る金銭債権(差押処分により差し押さえられた金銭債権に限る。以下この目において同じ。)について更に差押処分がされた場合について準用する。この場合において、同条三項中「差押命令を発した執行裁判所」とあるのは「差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所」と、「執行裁判所は」とあるのは「裁判所書記官は」と、「他の執行裁判所」とあるのは「他の簡易裁判所裁判所書記官」と、同条四項中「決定」とあるのは「裁判所書記官の処分」と読み替えるものとする。

(執行裁判所)

百六七条の三  少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分に関しては、その裁判所書記官の所属する簡易裁判所をもつて執行裁判所とする。

裁判所書記官の執行処分の効力等)

百六七条の四  少額訴訟債権執行の手続において裁判所書記官が行う執行処分は、特別の定めがある場合を除き、相当と認める方法で告知することによつて、その効力を生ずる。

 前項に規定する裁判所書記官が行う執行処分に対しては、執行裁判所に執行異議を申し立てることができる。

 十条六項前段及び9項の規定は、前項の規定による執行異議の申立てがあつた場合について準用する。

(差押処分)

百六十七条の五  裁判所書記官は、差押処分において、債務者に対し金銭債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない。

 百四五条二項から四項までの規定は、差押処分について準用する。

 差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。

 前項の執行異議の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 民事訴訟法七四条一項 の規定は、差押処分の申立てについての裁判所書記官の処分について準用する。この場合においては、三項及び前項並びに同条三項 の規定を準用する。

(費用の予納等)

百六七条の六  少額訴訟債権執行についての十四条一項及び四項の規定の適用については、これらの規定中「執行裁判所」とあるのは、「裁判所書記官」とする。

 十四条二項及び三項の規定は、前項の規定により読み替えて適用する同条一項の規定による裁判所書記官の処分については、適用しない。

 一項の規定により読み替えて適用する十四条四項の規定による裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。

 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 一項の規定により読み替えて適用する十四条四項の規定により少額訴訟債権執行の手続を取り消す旨の裁判所書記官の処分は、確定しなければその効力を生じない。

(第三者異議の訴えの管轄裁判所)

百六十七条の七  少額訴訟債権執行の不許を求める第三者異議の訴えは、三8条三項の規定にかかわらず、執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。

(差押禁止債権の範囲の変更)

百六七条の8  執行裁判所は、申立てにより、債務者及び債権者の生活の状況その他の事情を考慮して、差押処分の全部若しくは一部を取り消し、又は百六七条の十四において準用する百五二条の規定により差し押さえてはならない金銭債権の部分について差押処分をすべき旨を命ずることができる。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定により差押処分が取り消された金銭債権について差押処分をすべき旨を命じ、又は同項の規定によりされた差押処分の全部若しくは一部を取り消すことができる。

 百五三条三項から五項までの規定は、前二項の申立てがあつた場合について準用する。この場合において、同条四項中「差押命令」とあるのは、「差押処分」と読み替えるものとする。

(配当要求)

百六七条の9  執行力のある債務名義の正本を有する債権者及び文書により先取特権を有することを証明した債権者は、裁判所書記官に対し、配当要求をすることができる。

 百五四条二項の規定は、前項の配当要求があつた場合について準用する。

 一項の配当要求を却下する旨の裁判所書記官の処分に対する執行異議の申立ては、その告知を受けた日から一週間の不変期間内にしなければならない。

 前項の執行異議の申立てを却下する裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(転付命令等のための移行)

百六七条の十  差押えに係る金銭債権について転付命令又は譲渡命令、売却命令、管理命令その他相当な方法による換価を命ずる命令(以下この条において「転付命令等」という。)のいずれかの命令を求めようとするときは、差押債権者は、執行裁判所に対し、転付命令等のうちいずれの命令を求めるかを明らかにして、債権執行の手続に事件を移行させることを求める旨の申立てをしなければならない。

 前項に規定する命令の種別を明らかにしてされた同項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。

 前項の規定による決定が効力を生ずる前に、既にされた執行処分について執行異議の申立て又は執行抗告があつたときは、当該決定は、当該執行異議の申立て又は執行抗告についての裁判が確定するまでは、その効力を生じない。

 二項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 一項の申立てを却下する決定に対しては、執行抗告をすることができる。

 二項の規定による決定が効力を生じたときは、差押処分の申立て又は一項の申立てがあつた時に二項に規定する地方裁判所にそれぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立てがあつたものとみなし、既にされた執行処分その他の行為は債権執行の手続においてされた執行処分その他の行為とみなす。

(配当等のための移行等)

百六七条の十一  百六七条の十四において準用する百五六条一項若しくは二項又は百五七条五項の規定により供託がされた場合において、債権者が二人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができないため配当を実施すべきときは、執行裁判所は、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。

 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令又は差押処分が発せられたときは、執行裁判所は、同項に規定する地方裁判所における債権執行の手続のほか、当該差押命令を発した執行裁判所又は当該差押処分をした裁判所書記官の所属する簡易裁判所の所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続にも事件を移行させることができる。

 一項に規定する供託がされた場合において、債権者が一人であるとき、又は債権者が二人以上であつて供託金で各債権者の債権及び執行費用の全部を弁済することができるときは、裁判所書記官は、供託金の交付計算書を作成して、債権者に弁済金を交付し、剰余金を債務者に交付する。

 前項に規定する場合において、差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられたときは、執行裁判所は、同項の規定にかかわらず、その所在地を管轄する地方裁判所又は当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。

 差押えに係る金銭債権について更に差押命令が発せられた場合において、当該差押命令を発した執行裁判所が百六十一条六項において準用する百9条の規定又は百六六条一項二号の規定により配当等を実施するときは、執行裁判所は、当該差押命令を発した執行裁判所における債権執行の手続に事件を移行させなければならない。

 一項、二項、四項又は前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 8四条三項及び四項、88条、9一条(一項六号及び七号を除く。)並びに9二条一項の規定は三項の規定により裁判所書記官が実施する弁済金の交付の手続について、前条三項の規定は一項、二項、四項又は五項の規定による決定について、同条六項の規定は一項、二項、四項又は五項の規定による決定が効力を生じた場合について準用する。

(裁量移行)

百六七条の十二  執行裁判所は、差し押さえるべき金銭債権の内容その他の事情を考慮して相当と認めるときは、その所在地を管轄する地方裁判所における債権執行の手続に事件を移行させることができる。

 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 百六七条の十三項の規定は一項の規定による決定について、同条六項の規定は一項の規定による決定が効力を生じた場合について準用する。この場合において、同条六項中「差押処分の申立て又は一項の申立て」とあるのは「差押処分の申立て」と、「それぞれ差押命令の申立て又は転付命令等の申立て」とあるのは「差押命令の申立て」と読み替えるものとする。

(総則規定の適用関係)

百六七条の十三  少額訴訟債権執行についての一章及び二章一節の規定の適用については、十三条一項中「執行裁判所でする手続」とあるのは「百六七条の二二項に規定する少額訴訟債権執行の手続」と、十六条一項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、十七条中「執行裁判所の行う民事執行」とあるのは「百六七条の二二項に規定する少額訴訟債権執行」と、四十条一項中「執行裁判所又は執行官」とあるのは「裁判所書記官」と、四二条四項中「執行裁判所の裁判所書記官」とあるのは「裁判所書記官」とする。

(債権執行の規定の準用)

百六七条の十四  百四六条から百五二条まで、百五五条から百五8条まで、百六四条五項及び六項並びに百六五条(三号及び四号を除く。)の規定は、少額訴訟債権執行について準用する。この場合において、百四六条、百五五条三項及び百五六条三項中「執行裁判所」とあるのは「裁判所書記官」と、百四六条一項中「差押命令を発する」とあるのは「差押処分をする」と、百四七条一項、百四8条二項、百五十条及び百五五条一項中「差押命令」とあるのは「差押処分」と、百四七条一項及び百四8条一項中「差押えに係る債権」とあるのは「差押えに係る金銭債権」と、百四9条中「差押命令が発せられたとき」とあるのは「差押処分がされたとき」と、百六四条五項中「差押命令の取消決定」とあるのは「差押処分の取消決定若しくは差押処分を取り消す旨の裁判所書記官の処分」と、百六五条(見出しを含む。)中「配当等」とあるのは「弁済金の交付」と読み替えるものとする。

     五款 扶養義務等に係る金銭債権についての強制執行の特例

 

(扶養義務等に係る金銭債権についての間接強制)

百六七条の十五  百五一条の二一項各号に掲げる義務に係る金銭債権についての強制執行は、前各款の規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が百七二条一項に規定する方法により行う。ただし、債務者が、支払能力を欠くためにその金銭債権に係る債務を弁済することができないとき、又はその債務を弁済することによつてその生活が著しく窮迫するときは、この限りでない。

 前項の規定により同項に規定する金銭債権について百七二条一項に規定する方法により強制執行を行う場合において、債務者が債権者に支払うべき金銭の額を定めるに当たつては、執行裁判所は、債務不履行により債権者が受けるべき不利益並びに債務者の資力及び従前の債務の履行の態様を特に考慮しなければならない。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、債務者の申立てにより、その申立てがあつた時(その申立てがあつた後に事情の変更があつたときは、その事情の変更があつた時)までさかのぼつて、一項の規定による決定を取り消すことができる。

 前項の申立てがあつたときは、執行裁判所は、その裁判が効力を生ずるまでの間、担保を立てさせ、又は立てさせないで、一項の規定による決定の執行の停止を命ずることができる。

 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。

 百七二条二項から五項までの規定は一項の場合について、同条三項及び五項の規定は三項の場合について、百七三条二項の規定は一項の執行裁判所について準用する。

(扶養義務等に係る定期金債権を請求する場合の特例)

百六七条の十六  債権者が百五一条の二一項各号に掲げる義務に係る確定期限の定めのある定期金債権を有する場合において、その一部に不履行があるときは、三十条一項の規定にかかわらず、当該定期金債権のうち六月以内に確定期限が到来するものについても、前条一項に規定する方法による強制執行を開始することができる。

 

 

 

 

 

   三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行

 

(不動産の引渡し等の強制執行

百六8条  不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。

 執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。

 一項の強制執行は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。

 執行官は、一項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。

 執行官は、一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。

 執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する。

 前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。

 五項(六項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。

 五七条五項の規定は、一項の強制執行について準用する。

(明渡しの催告)

百六8条の二  執行官は、不動産等の引渡し又は明渡しの強制執行の申立てがあつた場合において、当該強制執行を開始することができるときは、次項に規定する引渡し期限を定めて、明渡しの催告(不動産等の引渡し又は明渡しの催告をいう。以下この条において同じ。)をすることができる。ただし、債務者が当該不動産等を占有していないときは、この限りでない。

 引渡し期限(明渡しの催告に基づき六項の規定による強制執行をすることができる期限をいう。以下この条において同じ。)は、明渡しの催告があつた日から一月を経過する日とする。ただし、執行官は、執行裁判所の許可を得て、当該日以後の日を引渡し期限とすることができる。

 執行官は、明渡しの催告をしたときは、その旨、引渡し期限及び五項の規定により債務者が不動産等の占有を移転することを禁止されている旨を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。

 執行官は、引渡し期限が経過するまでの間においては、執行裁判所の許可を得て、引渡し期限を延長することができる。この場合においては、執行官は、引渡し期限の変更があつた旨及び変更後の引渡し期限を、当該不動産等の所在する場所に公示書その他の標識を掲示する方法により、公示しなければならない。

 明渡しの催告があつたときは、債務者は、不動産等の占有を移転してはならない。ただし、債権者に対して不動産等の引渡し又は明渡しをする場合は、この限りでない。

 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、引渡し期限が経過するまでの間においては、占有者(一項の不動産等を占有する者であつて債務者以外のものをいう。以下この条において同じ。)に対して、一項の申立てに基づく強制執行をすることができる。この場合において、四二条及び前条の規定の適用については、当該占有者を債務者とみなす。

 明渡しの催告後に不動産等の占有の移転があつたときは、占有者は、明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由として、債権者に対し、強制執行の不許を求める訴えを提起することができる。この場合においては、三六条、三七条及び三8条三項の規定を準用する。

 明渡しの催告後に不動産等を占有した占有者は、明渡しの催告があつたことを知つて占有したものと推定する。

 六項の規定により占有者に対して強制執行がされたときは、当該占有者は、執行異議の申立てにおいて、債権者に対抗することができる権原により目的物を占有していること、又は明渡しの催告があつたことを知らず、かつ、債務者の占有の承継人でないことを理由とすることができる。

10  明渡しの催告に要した費用は、執行費用とする。

(動産の引渡しの強制執行

百六9条  百六8条一項に規定する動産以外の動産(有価証券を含む。)の引渡しの強制執行は、執行官が債務者からこれを取り上げて債権者に引き渡す方法により行う。

 百2二条二項、百2三条二項及び百六8条五項から8項までの規定は、前項の強制執行について準用する。

(目的物を第三者が占有する場合の引渡しの強制執行

百七十条  第三者強制執行の目的物を占有している場合においてその物を債務者に引き渡すべき義務を負つているときは、物の引渡しの強制執行は、執行裁判所が、債務者の第三者に対する引渡請求権を差し押さえ、請求権の行使を債権者に許す旨の命令を発する方法により行う。

 百四四条、百四五条、百四七条、百四8条、百五五条一項及び二項並びに百五8条の規定は、前項の強制執行について準用する。

(代替執行)

百七一条  民法四百四十条二項 本文又は三項 に規定する請求に係る強制執行は、執行裁判所が民法 の規定に従い決定をする方法により行う。

 前項の執行裁判所は、三十三条二項一号又は六号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所とする。

 執行裁判所は、一項の決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。

 執行裁判所は、一項の決定をする場合には、申立てにより、債務者に対し、その決定に掲げる行為をするために必要な費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることができる。

 一項の強制執行の申立て又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 六条二項の規定は、一項の決定を執行する場合について準用する。

(間接強制)

百七二条  作為又は不作為を目的とする債務で前条一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。

 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。

 執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。

 一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。

 一項の強制執行の申立て又は二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 前条二項の規定は、一項の執行裁判所について準用する。

百七三条  百六8条一項、百六9条一項、百七十条一項及び百七一条一項に規定する強制執行は、それぞれ百六8条から百七一条までの規定により行うほか、債権者の申立てがあるときは、執行裁判所が前条一項に規定する方法により行う。この場合においては、同条二項から五項までの規定を準用する。

 前項の執行裁判所は、三三条二項各号(一号の二及び四号を除く。)に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該債務名義についての執行文付与の訴えの管轄裁判所とする。

(意思表示の擬制

百七四条  意思表示をすべきことを債務者に命ずる判決その他の裁判が確定し、又は和解、認諾、調停若しくは労働審判に係る債務名義が成立したときは、債務者は、その確定又は成立の時に意思表示をしたものとみなす。ただし、債務者の意思表示が、債権者の証明すべき事実の到来に係るときは2七条一項の規定により執行文が付与された時に、反対給付との引換え又は債務の履行その他の債務者の証明すべき事実のないことに係るときは次項又は三項の規定により執行文が付与された時に意思表示をしたものとみなす。

 債務者の意思表示が反対給付との引換えに係る場合においては、執行文は、債権者が反対給付又はその提供のあつたことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

 債務者の意思表示が債務者の証明すべき事実のないことに係る場合において、執行文の付与の申立てがあつたときは、裁判所書記官は、債務者に対し一定の期間を定めてその事実を証明する文書を提出すべき旨を催告し、債務者がその期間内にその文書を提出しないときに限り、執行文を付与することができる。

百七五条  削除

百七六条  削除

百七七条  削除

百七8条  削除

百七9条  削除

   三章 担保権の実行としての競売等

(不動産担保権の実行の方法)

百8十条  不動産(登記することができない土地の定着物を除き、四十三条二項の規定により不動産とみなされるものを含む。以下この章において同じ。)を目的とする担保権(以下この章において「不動産担保権」という。)の実行は、次に掲げる方法であつて債権者が選択したものにより行う。

 担保不動産競売(競売による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

 担保不動産収益執行(不動産から生ずる収益を被担保債権の弁済に充てる方法による不動産担保権の実行をいう。以下この章において同じ。)の方法

(不動産担保権の実行の開始)

百8一条  不動産担保権の実行は、次に掲げる文書が提出されたときに限り、開始する。

 担保権の存在を証する確定判決若しくは家事事件手続法 (平成2三年法律五十二号)七五条 の審判又はこれらと同一の効力を有するものの謄本

 担保権の存在を証する公証人が作成した公正証書の謄本

 担保権の登記(仮登記を除く。)に関する登記事項証明書

 一般の先取特権にあつては、その存在を証する文書

 抵当証券の所持人が不動産担保権の実行の申立てをするには、抵当証券を提出しなければならない。

 担保権について承継があつた後不動産担保権の実行の申立てをする場合には、相続その他の一般承継にあつてはその承継を証する文書を、その他の承継にあつてはその承継を証する裁判の謄本その他の公文書を提出しなければならない。

 不動産担保権の実行の開始決定がされたときは、裁判所書記官は、開始決定の送達に際し、不動産担保権の実行の申立てにおいて提出された前三項に規定する文書の目録及び一項四号に掲げる文書の写しを相手方に送付しなければならない。

(開始決定に対する執行抗告等)

百8二条  不動産担保権の実行の開始決定に対する執行抗告又は執行異議の申立てにおいては、債務者又は不動産の所有者(不動産とみなされるものにあつては、その権利者。以下同じ。)は、担保権の不存在又は消滅を理由とすることができる。

(不動産担保権の実行の手続の停止)

百8三条  不動産担保権の実行の手続は、次に掲げる文書の提出があつたときは、停止しなければならない。

 担保権のないことを証する確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。次号において同じ。)の謄本

 百8一条一項一号に掲げる裁判若しくはこれと同一の効力を有するものを取り消し、若しくはその効力がないことを宣言し、又は同項三号に掲げる登記を抹消すべき旨を命ずる確定判決の謄本

 担保権の実行をしない旨、その実行の申立てを取り下げる旨又は債権者が担保権によつて担保される債権の弁済を受け、若しくはその債権の弁済の猶予をした旨を記載した裁判上の和解の調書その他の公文書の謄本

 担保権の登記の抹消に関する登記事項証明書

 不動産担保権の実行の手続の停止及び執行処分の取消しを命ずる旨を記載した裁判の謄本

 不動産担保権の実行の手続の一時の停止を命ずる旨を記載した裁判の謄本

 担保権の実行を一時禁止する裁判の謄本

 前項一号から五号までに掲げる文書が提出されたときは、執行裁判所は、既にした執行処分をも取り消さなければならない。

 十二条の規定は、前項の規定による決定については適用しない。

(代金の納付による不動産取得の効果)

百8四条  担保不動産競売における代金の納付による買受人の不動産の取得は、担保権の不存在又は消滅により妨げられない。

百8五条  削除

百8六条  削除

(担保不動産競売の開始決定前の保全処分等)

百8七条  執行裁判所は、担保不動産競売の開始決定前であつても、債務者又は不動産の所有者若しくは占有者が価格減少行為(五五条一項に規定する価格減少行為をいう。以下この項において同じ。)をする場合において、特に必要があるときは、当該不動産につき担保不動産競売の申立てをしようとする者の申立てにより、買受人が代金を納付するまでの間、同条一項各号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずることができる。ただし、当該価格減少行為による価格の減少又はそのおそれの程度が軽微であるときは、この限りでない。

 前項の場合において、五五条一項二号又は三号に掲げる保全処分は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときでなければ、命ずることができない。

 前項の債務者又は同項の不動産の所有者が当該不動産を占有する場合

 前項の不動産の占有者の占有の権原が同項の規定による申立てをした者に対抗することができない場合

 一項の規定による申立てをするには、担保不動産競売の申立てをする場合において百8一条一項から三項までの規定により提出すべき文書を提示しなければならない。

 執行裁判所は、申立人が一項の保全処分を命ずる決定の告知を受けた日から三月以内に同項の担保不動産競売の申立てをしたことを証する文書を提出しないときは、被申立人又は同項の不動産の所有者の申立てにより、その決定を取り消さなければならない。

 五五条三項から五項までの規定は一項の規定による決定について、同条六項の規定は一項又はこの項において準用する同条五項の申立てについての裁判について、同条七項の規定はこの項において準用する同条五項の規定による決定について、同条8項及び9項並びに五五条の二の規定は一項の規定による決定(五五条一項一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)について、五五条十項の規定は一項の申立て又は同項の規定による決定(同条一項一号に掲げる保全処分又は公示保全処分を命ずるものを除く。)の執行に要した費用について、8三条の二の規定は一項の規定による決定(五五条一項三号に掲げる保全処分及び公示保全処分を命ずるものに限る。)の執行がされた場合について準用する。この場合において、五五条三項中「債務者以外の占有者」とあるのは、「債務者及び不動産の所有者以外の占有者」と読み替えるものとする。

(不動産執行の規定の準用)

百88条  四四条の規定は不動産担保権の実行について、前章二節一款二目(8一条を除く。)の規定は担保不動産競売について、同款三目の規定は担保不動産収益執行について準用する。

(船舶の競売)

百89条  前章二節二款及び百8一条から百8四条までの規定は、船舶を目的とする担保権の実行としての競売について準用する。この場合において、百十五条三項中「執行力のある債務名義の正本」とあるのは「百89条において準用する百8一条一項から三項までに規定する文書」と、百8一条一項四号中「一般の先取特権」とあるのは「一般の先取特権又は商法8百四二条 に定める先取特権」と読み替えるものとする。

(動産競売の要件)

百9十条  動産を目的とする担保権の実行としての競売(以下「動産競売」という。)は、次に掲げる場合に限り、開始する。

 債権者が執行官に対し当該動産を提出した場合

 債権者が執行官に対し当該動産の占有者が差押えを承諾することを証する文書を提出した場合

 債権者が執行官に対し次項の許可の決定書の謄本を提出し、かつ、百9二条において準用する百2三条二項の規定による捜索に先立つて又はこれと同時に当該許可の決定が債務者に送達された場合

 執行裁判所は、担保権の存在を証する文書を提出した債権者の申立てがあつたときは、当該担保権についての動産競売の開始を許可することができる。ただし、当該動産が百2三条二項に規定する場所又は容器にない場合は、この限りでない。

 前項の許可の決定は、債務者に送達しなければならない。

 二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(動産の差押えに対する執行異議)

百9一条  動産競売に係る差押えに対する執行異議の申立てにおいては、債務者又は動産の所有者は、担保権の不存在若しくは消滅又は担保権によつて担保される債権の一部の消滅を理由とすることができる。

(動産執行の規定の準用)

百9二条  前章二節三款(百2三条二項、百28条、百三一条及び百三二条を除く。)及び百8三条の規定は動産競売について、百28条、百三一条及び百三二条の規定は一般の先取特権の実行としての動産競売について、百2三条二項の規定は百9十条一項三号に掲げる場合における動産競売について準用する。

(債権及びその他の財産権についての担保権の実行の要件等)

百9三条  百四三条に規定する債権及び百六七条一項に規定する財産権(以下この項において「その他の財産権」という。)を目的とする担保権の実行は、担保権の存在を証する文書(権利の移転について登記等を要するその他の財産権を目的とする担保権で一般の先取特権以外のものについては、百8一条一項一号から三号まで、二項又は三項に規定する文書)が提出されたときに限り、開始する。担保権を有する者が目的物の売却、賃貸、滅失若しくは損傷又は目的物に対する物権の設定若しくは土地収用法 (昭和2六年法律二百9号)による収用その他の行政処分により債務者が受けるべき金銭その他の物に対して民法 その他の法律の規定によつてするその権利の行使についても、同様とする。

 前章二節四款一目(百四六条二項、百五二条及び百五三条を除く。)及び百8二条から百8十四条までの規定は前項に規定する担保権の実行及び行使について、百四十六条二項、百五二条及び百五三条の規定は前項に規定する一般の先取特権の実行及び行使について準用する。

(担保権の実行についての強制執行の総則規定の準用)

百9四条  三8条、四一条及び四二条の規定は、担保権の実行としての競売、担保不動産収益執行並びに前条一項に規定する担保権の実行及び行使について準用する。

留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)

百9五条  留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。

   四章 財産開示手続

(管轄)

百9六条  この章の規定による債務者の財産の開示に関する手続(以下「財産開示手続」という。)については、債務者の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

(実施決定)

百9七条  執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、執行力のある債務名義の正本(債務名義が2二条二号、三号の二、四号若しくは五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する金銭債権の債権者の申立てにより、債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。ただし、当該執行力のある債務名義の正本に基づく強制執行を開始することができないときは、この限りでない。

 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。

 知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。

 執行裁判所は、次のいずれかに該当するときは、債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者の申立てにより、当該債務者について、財産開示手続を実施する旨の決定をしなければならない。

 強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立ての日より六月以上前に終了したものを除く。)において、申立人が当該先取特権の被担保債権の完全な弁済を得ることができなかつたとき。

 知れている財産に対する担保権の実行を実施しても、申立人が前号の被担保債権の完全な弁済を得られないことの疎明があつたとき。

 前二項の規定にかかわらず、債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者。一号において同じ。)が前二項の申立ての日前三年以内に財産開示期日(財産を開示すべき期日をいう。以下同じ。)においてその財産について陳述をしたものであるときは、財産開示手続を実施する旨の決定をすることができない。ただし、次に掲げる事由のいずれかがある場合は、この限りでない。

 債務者が当該財産開示期日において一部の財産を開示しなかつたとき。

 債務者が当該財産開示期日の後に新たに財産を取得したとき。

 当該財産開示期日の後に債務者と使用者との雇用関係が終了したとき。

 一項又は二項の決定がされたときは、当該決定(二項の決定にあつては、当該決定及び同項の文書の写し)を債務者に送達しなければならない。

 一項又は二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

 一項又は二項の決定は、確定しなければその効力を生じない。

(期日指定及び期日の呼出し)

百98条  執行裁判所は、前条一項又は二項の決定が確定したときは、財産開示期日を指定しなければならない。

 財産開示期日には、次に掲げる者を呼び出さなければならない。

 申立人

 債務者(債務者に法定代理人がある場合にあつては当該法定代理人、債務者が法人である場合にあつてはその代表者)

(財産開示期日)

百99条  開示義務者(前条二項二号に掲げる者をいう。以下同じ。)は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産(百三一条一号又は二号に掲げる動産を除く。)について陳述しなければならない。

 前項の陳述においては、陳述の対象となる財産について、二章二節の規定による強制執行又は前章の規定による担保権の実行の申立てをするのに必要となる事項その他申立人に開示する必要があるものとして最高裁判所規則で定める事項を明示しなければならない。

 執行裁判所は、財産開示期日において、開示義務者に対し質問を発することができる。

 申立人は、財産開示期日に出頭し、債務者の財産の状況を明らかにするため、執行裁判所の許可を得て開示義務者に対し質問を発することができる。

 執行裁判所は、申立人が出頭しないときであつても、財産開示期日における手続を実施することができる。

 財産開示期日における手続は、公開しない。

 民事訴訟法百9五条 及び二百六条 の規定は前各項の規定による手続について、同法二百一条一項 及び二項 の規定は開示義務者について準用する。

(陳述義務の一部の免除)

二百条  財産開示期日において債務者の財産の一部を開示した開示義務者は、申立人の同意がある場合又は当該開示によつて百9七条一項の金銭債権若しくは同条二項各号の被担保債権の完全な弁済に支障がなくなつたことが明らかである場合において、執行裁判所の許可を受けたときは、前条一項の規定にかかわらず、その余の財産について陳述することを要しない。

 前項の許可の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

(財産開示事件の記録の閲覧等の制限)

二百一条  財産開示事件の記録中財産開示期日に関する部分についての十七条の規定による請求は、次に掲げる者に限り、することができる。

 申立人

 債務者に対する金銭債権について執行力のある債務名義の正本(債務名義が2二条二号、三号の二、四号若しくは五号に掲げるもの又は確定判決と同一の効力を有する支払督促であるものを除く。)を有する債権者

 債務者の財産について一般の先取特権を有することを証する文書を提出した債権者

 債務者又は開示義務者

(財産開示事件に関する情報の目的外利用の制限)

二百二条  申立人は、財産開示手続において得られた債務者の財産又は債務に関する情報を、当該債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

 前条二号又は三号に掲げる者であつて、財産開示事件の記録中の財産開示期日に関する部分の情報を得たものは、当該情報を当該財産開示事件の債務者に対する債権をその本旨に従つて行使する目的以外の目的のために利用し、又は提供してはならない。

強制執行及び担保権の実行の規定の準用)

二百三条  三9条及び四十条の規定は執行力のある債務名義の正本に基づく財産開示手続について、四二条(二項を除く。)の規定は財産開示手続について、百8二条及び百8三条の規定は一般の先取特権に基づく財産開示手続について準用する。

   五章 罰則

(公示書等損壊罪)

二百四条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 五五条一項(一号に係る部分に限る。)、六8条の二一項若しくは七七条一項(一号に係る部分に限る。)(これらの規定を百2一条(百89条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び百88条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)又は百8七条一項(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)の規定による命令に基づき執行官が公示するために施した公示書その他の標識(刑法9六条 に規定する封印及び差押えの表示を除く。)を損壊した者

 百六8条の二三項又は四項の規定により執行官が公示するために施した公示書その他の標識を損壊した者

(陳述等拒絶の罪)

二百五条  次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

 売却基準価額の決定に関し、執行裁判所の呼出しを受けた審尋の期日において、正当な理由なく、出頭せず、若しくは陳述を拒み、又は虚偽の陳述をした者

 五七条二項(百2一条(百89条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)及び百88条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した者

 百六8条二項の規定による執行官の質問又は文書の提出の要求に対し、正当な理由なく、陳述をせず、若しくは文書の提示を拒み、又は虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提示した債務者又は同項に規定する不動産等を占有する第三者

 不動産(登記することができない土地の定着物を除く。以下この項において同じ。)の占有者であつて、その占有の権原を差押債権者、仮差押債権者又は五9条一項(百88条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定により消滅する権利を有する者に対抗することができないものが、正当な理由なく、六四条の二五項(百88条(百9五条の規定によりその例によることとされる場合を含む。)において準用する場合を含む。)の規定による不動産の立入りを拒み、又は妨げたときは、三十万円以下の罰金に処する。

(過料に処すべき場合)

二百六条  次の各号に掲げる場合には、三十万円以下の過料に処する。

 開示義務者が、正当な理由なく、執行裁判所の呼出しを受けた財産開示期日に出頭せず、又は当該財産開示期日において宣誓を拒んだとき。

 財産開示期日において宣誓した開示義務者が、正当な理由なく百99条一項から四項までの規定により陳述すべき事項について陳述をせず、又は虚偽の陳述をしたとき。

 二百二条の規定に違反して、同条の情報を同条に規定する目的以外の目的のために利用し、又は提供した者は、三十万円以下の過料に処する。

(管轄等)

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

平成13年法律31号

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律

目次

前文

第1章 総則(1条・2条)

第1章の2 基本方針及び都道府県基本計画等(第2条の2・2条の3)

第2章 配偶者暴力相談支援センター等(3条―5条)

第3章 被害者の保護(6条―9条の2)

第4章 保護命令(10条―22条)

第5章 雑則(23条―28条)

第5章の2 補則(28条の2)

第6章 罰則(29条・30条)

附則

我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、人権の擁護と男女平等の実現に向けた取組が行われている。

ところが、配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、被害者の救済が必ずしも分に行われてこなかった。また、配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている。

このような状況を改善し、人権の擁護と男女平等の実現を図るためには、配偶者からの暴力を防止し、被害者を保護するための施策を講ずることが必要である。このことは、女性に対する暴力を根絶しようと努めている国際社会における取組にも沿うものである。

ここに、配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備することにより、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るため、この法律を制定する。

 

第1章 総則

 

1条(定義) この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び28条の2において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。

2 この法律において「被害者」とは、配偶者からの暴力を受けた者をいう。

3 この法律にいう「配偶者」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含み、「離婚」には、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にあった者が、事実上離婚したと同様の事情に入ることを含むものとする。

 

2条(国及び地方公共団体の責務)

 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力を防止するとともに、被害者の自立を支援することを含め、その適切な保護を図る責務を有する。

 

1章の2 基本方針及び都道府県基本計画等

2条の2(基本方針)

内閣総理大臣国家公安委員会法務大臣及び厚生労働大臣(以下この条及び次条5項において「主務大臣」という。)は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策に関する基本的な方針(以下この条並びに次条1項及び3項において「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針においては、次に掲げる事項につき、次条1項の都道府県基本計画及び同条3項の市町村基本計画の指針となるべきものを定めるものとする。

一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な事項

二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の内容に関する事項

三 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項

3 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更しようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。

4 主務大臣は、基本方針を定め、又はこれを変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

 

2条の3(都道府県基本計画等)

1 都道府県は、基本方針に即して、当該都道府県における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「都道府県基本計画」という。)を定めなければならない。

2 都道府県基本計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。

一 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する基本的な方針

二 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施内容に関する事項

3 その他配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する重要事項

3 市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、基本方針に即し、かつ、都道府県基本計画を勘案して、当該市町村における配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のための施策の実施に関する基本的な計画(以下この条において「市町村基本計画」という。)を定めるよう努めなければならない。

4 都道府県又は市町村は、都道府県基本計画又は市町村基本計画を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。

5 主務大臣は、都道府県又は市町村に対し、都道府県基本計画又は市町村基本計画の作成のために必要な助言その他の援助を行うよう努めなければならない。

 

第2章 配偶者暴力相談支援センター等

3条(配偶者暴力相談支援センター)

1 都道府県は、当該都道府県が設置する婦人相談所その他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするものとする。

2 市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするよう努めるものとする。

3 配偶者暴力相談支援センターは、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護のため、次に掲げる業務を行うものとする。

 一 被害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は婦人相談員若しくは相談を行う機関を紹介すること。

 二 被害者の心身の健康を回復させるため、医学的又は心理学的な指導その他の必要な指導を行うこと。

 三 被害者(被害者がその家族を同伴する場合にあっては、被害者及びその同伴する家族。次号、6号、5条、8条の3及び9条において同じ。)の緊急時における安全の確保及び一時保護を行うこと。

 四 被害者が自立して生活することを促進するため、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。

 五 第4章に定める保護命令の制度の利用について、情報の提供、助言、関係機関への連絡その他の援助を行うこと。

 六 被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。

4 前項3号の一時保護は、婦人相談所が、自ら行い、又は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うものとする。

5 配偶者暴力相談支援センターは、その業務を行うに当たっては、必要に応じ、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体との連携に努めるものとする。

 

4条(婦人相談員による相談等)

婦人相談員は、被害者の相談に応じ、必要な指導を行うことができる。

 

5条(婦人保護施設における保護)

都道府県は、婦人保護施設において被害者の保護を行うことができる。

 

第3章 被害者の保護

6条(配偶者からの暴力の発見者による通報等)

1 配偶者からの暴力(配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限る。以下この章において同じ。)を受けている者を発見した者は、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない。

2 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報することができる。この場合において、その者の意思を尊重するよう努めるものとする。

3 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前二項の規定により通報することを妨げるものと解釈してはならない。

4 医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その者に対し、配偶者暴力相談支援センター等の利用について、その有する情報を提供するよう努めなければならない。

 

7条(配偶者暴力相談支援センターによる保護についての説明等)

 配偶者暴力相談支援センターは、被害者に関する通報又は相談を受けた場合には、必要に応じ、被害者に対し、3条3項の規定により配偶者暴力相談支援センターが行う業務の内容について説明及び助言を行うとともに、必要な保護を受けることを勧奨するものとする。

 

8条(警察官による被害の防止)

 警察官は、通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときは、警察法警察官職務執行法その他の法令の定めるところにより、暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

8条の2(警察本部長等の援助)

 警視総監若しくは道府県警察本部長(道警察本部の所在地を包括する方面を除く方面については、方面本部長。15条3項において同じ。)又は警察署長は、配偶者からの暴力を受けている者から、配偶者からの暴力による被害を自ら防止するための援助を受けたい旨の申出があり、その申出を相当と認めるときは、当該配偶者からの暴力を受けている者に対し、国家公安委員会規則で定めるところにより、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うものとする。

 

8条の3(福祉事務所による自立支援)

 社会福祉法に定める福祉に関する事務所(次条において「福祉事務所」という。)は、生活保護法、児童福祉法、母子及び父子並びに寡婦福祉法その他の法令の定めるところにより、被害者の自立を支援するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

 

9条(被害者の保護のための関係機関の連携協力)

配偶者暴力相談支援センター、都道府県警察、福祉事務所、児童相談所その他の都道府県又は市町村の関係機関その他の関係機関は、被害者の保護を行うに当たっては、その適切な保護が行われるよう、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。

 

9条の2(苦情の適切かつ迅速な処理)

前条の関係機関は、被害者の保護に係る職員の職務の執行に関して被害者から苦情の申出を受けたときは、適切かつ迅速にこれを処理するよう努めるものとする。

 

第4章 保護命令

10条(保護命令)

1 被害者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫(被害者の生命又は身体に対し害を加える旨を告知してする脅迫をいう。以下この章において同じ。)を受けた者に限る。以下この章において同じ。)が、配偶者からの身体に対する暴力を受けた者である場合にあっては配偶者からの更なる身体に対する暴力(配偶者からの身体に対する暴力を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。12条1項2号において同じ。)により、配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた者である場合にあっては配偶者から受ける身体に対する暴力(配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力。同号において同じ。)により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときは、裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者(配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた後に、被害者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者。以下この条、同項3号及び4号並びに18条1項において同じ。)に対し、次の各号に掲げる事項を命ずるものとする。ただし、2号に掲げる事項については、申立ての時において被害者及び当該配偶者が生活の本拠を共にする場合に限る。

 一 命令の効力が生じた日から起算して6月間、被害者の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この号において同じ。)その他の場所において被害者の身辺につきまとい、又は被害者の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないこと。

 二 命令の効力が生じた日から起算して2月間、被害者と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近をはいかいしてはならないこと。

2 前項本文に規定する場合において、同項一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して6月を経過する日までの間、被害者に対して次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。

 一 面会を要求すること。

 二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 三 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。

 四 電話をかけて何も告げず、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールを送信すること。

 五 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、又は電子メールを送信すること。

 六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。

 七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。

 八 その性的羞しゆう恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

3 1項本文に規定する場合において、被害者がその成年に達しない子(以下この項及び次項並びに12条1項3号において単に「子」という。)と同居しているときであって、配偶者が幼年の子を連れ戻すと疑うに足りる言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは、1項1号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して6月を経過する日までの間、当該子の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)、就学する学校その他の場所において当該子の身辺につきまとい、又は当該子の住居、就学する学校その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。ただし、当該子が15歳以上であるときは、その同意がある場合に限る。

4 1項本文に規定する場合において、配偶者が被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者(被害者と同居している子及び配偶者と同居している者を除く。以下この項及び次項並びに12条1項4号において「親族等」という。)の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認めるときは、1項一号の規定による命令を発する裁判所又は発した裁判所は、被害者の申立てにより、その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、当該配偶者に対し、命令の効力が生じた日以後、同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して6月を経過する日までの間、当該親族等の住居(当該配偶者と共に生活の本拠としている住居を除く。以下この項において同じ。)その他の場所において当該親族等の身辺につきまとい、又は当該親族等の住居、勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないことを命ずるものとする。

5 前項の申立ては、当該親族等(被害者の15歳未満の子を除く。以下この項において同じ。)の同意(当該親族等が15歳未満の者又は成年被後見人である場合にあっては、その法定代理人の同意)がある場合に限り、することができる。

 

11条(管轄裁判所)

前条1項の規定による命令の申立てに係る事件は、相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。

2 前条1項の規定による命令の申立ては、次の各号に掲げる地を管轄する地方裁判所にもすることができる。

一 申立人の住所又は居所の所在地

二 当該申立てに係る配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫が行われた地

12条(保護命令の申立て)

1 10条1項から4項までの規定による命令(以下「保護命令」という。)の申立ては、次に掲げる事項を記載した書面でしなければならない。

 一 配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた状況

 二 配偶者からの更なる身体に対する暴力又は配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた後の配偶者から受ける身体に対する暴力により、生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいと認めるに足りる申立ての時における事情

 三 10条3項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該同居している子に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情

 四 10条4項の規定による命令の申立てをする場合にあっては、被害者が当該親族等に関して配偶者と面会することを余儀なくされることを防止するため当該命令を発する必要があると認めるに足りる申立ての時における事情

 五 配偶者暴力相談支援センターの職員又は警察職員に対し、前各号に掲げる事項について相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実の有無及びその事実があるときは、次に掲げる事項

  イ 当該配偶者暴力相談支援センター又は当該警察職員の所属官署の名称

  ロ 相談し、又は援助若しくは保護を求めた日時及び場所

  ハ 相談又は求めた援助若しくは保護の内容

  二 相談又は申立人の求めに対して執られた措置の内容

2 前項の書面(以下「申立書」という。)に同項5号イから2までに掲げる事項の記載がない場合には、申立書には、同項一号から4号までに掲げる事項についての申立人の供述を記載した書面で公証人法58条ノ2第1項の認証を受けたものを添付しなければならない。

 

13条(迅速な裁判)

 裁判所は、保護命令の申立てに係る事件については、速やかに裁判をするものとする。

 

14条(保護命令事件の審理の方法)

1 保護命令は、口頭弁論又は相手方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、これを発することができない。ただし、その期日を経ることにより保護命令の申立ての目的を達することができない事情があるときは、この限りでない。

2 申立書に12条1項5号イから2までに掲げる事項の記載がある場合には、裁判所は、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長に対し、申立人が相談し又は援助若しくは保護を求めた際の状況及びこれに対して執られた措置の内容を記載した書面の提出を求めるものとする。この場合において、当該配偶者暴力相談支援センター又は当該所属官署の長は、これに速やかに応ずるものとする。

3 裁判所は、必要があると認める場合には、前項の配偶者暴力相談支援センター若しくは所属官署の長又は申立人から相談を受け、若しくは援助若しくは保護を求められた職員に対し、同項の規定により書面の提出を求めた事項に関して更に説明を求めることができる。

 

15条(保護命令の申立てについての決定等)

1 保護命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。

2 保護命令は、相手方に対する決定書の送達又は相手方が出頭した口頭弁論若しくは審尋の期日における言渡しによって、その効力を生ずる。

3 保護命令を発したときは、裁判所書記官は、速やかにその旨及びその内容を申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長に通知するものとする。

4 保護命令を発した場合において、申立人が配偶者暴力相談支援センターの職員に対し相談し、又は援助若しくは保護を求めた事実があり、かつ、申立書に当該事実に係る12条1項5号イからニまでに掲げる事項の記載があるときは、裁判所書記官は、速やかに、保護命令を発した旨及びその内容を、当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センター(当該申立書に名称が記載された配偶者暴力相談支援センターが二以上ある場合にあっては、申立人がその職員に対し相談し、又は援助若しくは保護を求めた日時が最も遅い配偶者暴力相談支援センター)の長に通知するものとする。

5 保護命令は、執行力を有しない。

 

16条(即時抗告)

1 保護命令の申立てについての裁判に対しては、即時抗告をすることができる。

2 前項の即時抗告は、保護命令の効力に影響を及ぼさない。

3 即時抗告があった場合において、保護命令の取消しの原因となることが明らかな事情があることにつき疎明があったときに限り、抗告裁判所は、申立てにより、即時抗告についての裁判が効力を生ずるまでの間、保護命令の効力の停止を命ずることができる。事件の記録が原裁判所に存する間は、原裁判所も、この処分を命ずることができる。

4 前項の規定により10条1項一号の規定による命令の効力の停止を命ずる場合において、同条2項から4項までの規定による命令が発せられているときは、裁判所は、当該命令の効力の停止をも命じなければならない。

5 前2項の規定による裁判に対しては、不服を申し立てることができない。

6 抗告裁判所が10条1項1号の規定による命令を取り消す場合において、同条2項から4項までの規定による命令が発せられているときは、抗告裁判所は、当該命令をも取り消さなければならない。

7 前条4項の規定による通知がされている保護命令について、3項若しくは4項の規定によりその効力の停止を命じたとき又は抗告裁判所がこれを取り消したときは、裁判所書記官は、速やかに、その旨及びその内容を当該通知をした配偶者暴力相談支援センターの長に通知するものとする。

8 前条3項の規定は、3項及び4項の場合並びに抗告裁判所が保護命令を取り消した場合について準用する。

 

17条(保護命令の取消し)

1 保護命令を発した裁判所は、当該保護命令の申立てをした者の申立てがあった場合には、当該保護命令を取り消さなければならない。10条1項一号又は2項から4項までの規定による命令にあっては同号の規定による命令が効力を生じた日から起算して3月を経過した後において、同条1項2号の規定による命令にあっては当該命令が効力を生じた日から起算して2週間を経過した後において、これらの命令を受けた者が申し立て、当該裁判所がこれらの命令の申立てをした者に異議がないことを確認したときも、同様とする。

2 前条6項の規定は、10条1項一号の規定による命令を発した裁判所が前項の規定により当該命令を取り消す場合について準用する。

3 15条3項及び前条7項の規定は、前二項の場合について準用する。

 

18条(10条1項2号の規定による命令の再度の申立て)

1 1条1項2号の規定による命令が発せられた後に当該発せられた命令の申立ての理由となった身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫と同一の事実を理由とする同号の規定による命令の再度の申立てがあったときは、裁判所は、配偶者と共に生活の本拠としている住居から転居しようとする被害者がその責めに帰することのできない事由により当該発せられた命令の効力が生ずる日から起算して2月を経過する日までに当該住居からの転居を完了することができないことその他の同号の規定による命令を再度発する必要があると認めるべき事情があるときに限り、当該命令を発するものとする。ただし、当該命令を発することにより当該配偶者の生活に特に著しい支障を生ずると認めるときは、当該命令を発しないことができる。

2 前項の申立てをする場合における12条の規定の適用については、同条1項各号列記以外の部分中「次に掲げる事項」とあるのは「一号、2号及び5号に掲げる事項並びに18条1項本文の事情」と、同項5号中「前各号に掲げる事項」とあるのは「一号及び2号に掲げる事項並びに18条1項本文の事情」と、同条2項中「同項一号から4号までに掲げる事項」とあるのは「同項一号及び2号に掲げる事項並びに18条1項本文の事情」とする。

 

19条(事件の記録の閲覧等)

保護命令に関する手続について、当事者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、相手方にあっては、保護命令の申立てに関し口頭弁論若しくは相手方を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は相手方に対する保護命令の送達があるまでの間は、この限りでない。

 

20条(法務事務官による宣誓認証)

法務局若しくは地方法務局又はその支局の管轄区域内に公証人がいない場合又は公証人がその職務を行うことができない場合には、法務大臣は、当該法務局若しくは地方法務局又はその支局に勤務する法務事務官に12条2項(18条2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の認証を行わせることができる。

 

21条(民事訴訟法の準用)

この法律に特別の定めがある場合を除き、保護命令に関する手続に関しては、その性質に反しない限り、民事訴訟法の規定を準用する。

 

22条(最高裁判所規則

この法律に定めるもののほか、保護命令に関する手続に関し必要な事項は、最高裁判所規則で定める。

 

5章 雑則

23条(職務関係者による配慮等)

1 配偶者からの暴力に係る被害者の保護、捜査、裁判等に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、被害者の心身の状況、その置かれている環境等を踏まえ、被害者の国籍、障害の有無等を問わずその人権を尊重するとともに、その安全の確保及び秘密の保持に十分な配慮をしなければならない。

2 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、被害者の人権、配偶者からの暴力の特性等に関する理解を深めるために必要な研修及び啓発を行うものとする。

 

24条(教育及び啓発)

 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。

 

25条(調査研究の推進等)

 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に資するため、加害者の更生のための指導の方法、被害者の心身の健康を回復させるための方法等に関する調査研究の推進並びに被害者の保護に係る人材の養成及び資質の向上に努めるものとする。

 

26条(民間の団体に対する援助)

 国及び地方公共団体は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図るための活動を行う民間の団体に対し、必要な援助を行うよう努めるものとする。

 

27条(都道府県及び市の支弁)

1 都道府県は、次の各号に掲げる費用を支弁しなければならない。

一 3条3項の規定に基づき同項に掲げる業務を行う婦人相談所の運営に要する費用(次号に掲げる費用を除く。)

二 3条3項3号の規定に基づき婦人相談所が行う一時保護(同条4項に規定する厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行う場合を含む。)に要する費用

三 4条の規定に基づき都道府県知事の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用

四 5条の規定に基づき都道府県が行う保護(市町村、社会福祉法人その他適当と認める者に委託して行う場合を含む。)及びこれに伴い必要な事務に要する費用

2 市は、4条の規定に基づきその長の委嘱する婦人相談員が行う業務に要する費用を支弁しなければならない。



28条(国の負担及び補助)

1 国は、政令の定めるところにより、都道府県が前条1項の規定により支弁した費用のうち、同項一号及び2号に掲げるものについては、その10分の5を負担するものとする。

2 国は、予算の範囲内において、次の各号に掲げる費用の10分の5以内を補助することができる。

一 都道府県が前条1項の規定により支弁した費用のうち、同項3号及び4号に掲げるもの

二 市が前条2項の規定により支弁した費用

 

第5章の2 補則

28条の2(この法律の準用)

2条及び1章の2から前章までの規定は、生活の本拠を共にする交際(婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く。)をする関係にある相手からの暴力(当該関係にある相手からの身体に対する暴力等をいい、当該関係にある相手からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が当該関係を解消した場合にあっては、当該関係にあった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含む。)及び当該暴力を受けた者について準用する。この場合において、これらの規定中「配偶者からの暴力」とあるのは「28条の2に規定する関係にある相手からの暴力」と読み替えるほか、次の表の上欄に掲げる規定中同表の中欄に掲げる字句は、それぞれ同表の下欄に掲げる字句に読み替えるものとする。



2条

被害者

被害者(28条の2に規定する関係にある相手からの暴力を受けた者をいう。以下同じ。)

6条1項

配偶者又は配偶者であった者

同条に規定する関係にある相手又は同条に規定する関係にある相手であった者

1条1項から4項まで、11条2項2号、12条1項一号から4号まで及び18条1項

配偶者

28条の2に規定する関係にある相手

10条1項

離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合

28条の2に規定する関係を解消した場合




第6章 罰則

29条 保護命令(前条において読み替えて準用する10条1項から4項までの規定によるものを含む。次条において同じ。)に違反した者は、1年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

 

30条 12条1項(18条2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は28条の2において読み替えて準用する12条1項(28条の2において準用する18条2項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の規定により記載すべき事項について虚偽の記載のある申立書により保護命令の申立てをした者は、10万円以下の過料に処する。

 

附 則 抄

労働法~

 

まずは、労働基準法目次
第一章 総則
第二章 労働契約
第三章 賃金
第四章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇
第五章 安全及び衛生
第六章 年少者
第六章の二 妊産婦等
第七章 技能者の養成
第八章 災害補償
第九章 就業規則
第十章 寄宿舎
第十一章 監督機関
第十二章 雑則
第十三章 罰則